高速道路料金は値上げの流れ? 欧州の交通事情(1/4 ページ)

» 2010年04月14日 08時22分 公開
[松田雅央,Business Media 誠]

著者プロフィール:松田雅央(まつだまさひろ)

ドイツ・カールスルーエ市在住ジャーナリスト。東京都立大学工学研究科大学院修了後、1995年渡独。ドイツ及び欧州の環境活動やまちづくりをテーマに、執筆、講演、研究調査、視察コーディネートを行う。記事連載「EUレポート(日本経済研究所/月報)」、「環境・エネルギー先端レポート(ドイチェ・アセット・マネジメント株式会社/月次ニュースレター)」、著書に「環境先進国ドイツの今」、「ドイツ・人が主役のまちづくり」など。ドイツ・ジャーナリスト協会(DJV)会員。公式サイト:「ドイツ環境情報のページ


 日本の高速道路は料金の値下げや割引、さらには無料化を視野に入れ議論されているが、欧州の高速道路は逆に有料化や値上げの方向にある。有料といっても国によって料金と徴収方法は異なり単純な比較はできないのだが、どの国も財政は苦しく有料は当然の流れと受け止められているようだ。

 昔は完全無料だったドイツの高速道路も、5年前、ついに大型トラックが有料化された。今回の時事日想は、特にドイツの高速道路に焦点を当てその現状をレポートしたい。

ヒトラーの遺産

 ドイツの高速道路「アウトバーン(Autobahn)」の歴史をひも解くと、アドルフ・ヒトラーとナチスドイツの掲げた強国建設のビジョンにつき当る。ヒトラーが国策としてアウトバーン建設に着手した1つ目の理由は、第一次世界大戦後の不況にあえぐドイツ経済を浮揚させ雇用を創出することだった。全国をカバーする高速道路網を整備するコンセプトは時代の最先端をいくもので、これほど体系的に交通インフラを整備したのは世界初だったとされる。高速道路は軍事物資輸送の要であり(軍事物資輸送は鉄道が主でアウトバーンの比重は低かったという指摘もある)、短時間で滑走路にできるよう設計されるなど第二次世界大戦の布石という性格も持っていたが、国づくりの視点からみれば偉大な業績と言って間違いない。

 現在、アウトバーン総延長は1万2600キロに達し、距離では世界第3位、高速道路の密度では世界第1位となっている。

ドイツのアウトバーン網とサービスエリアの所在地(出典:アウトバーン・サービスエリア
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