「開国博Y150」「東京五輪招致」を巡る非合理な減額請求(3/4 ページ)

» 2010年04月13日 08時00分 公開
[中ノ森清訓,INSIGHT NOW!]
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自ら優良取引先を退けることに

 横浜市や東京都は、たとえ今回の騒動でいくらかの損失を回収できたとしても、中長期的には、もっと大きな利益を失うことになりました。それは、「こことは、まっとうな商売ができない」というイメージを、広く多くのサプライヤに広めてしまったことです。

 「あそこは、自分たちの失敗のツケをこちらに回してくる。」

 「あそこは、ちゃんと契約をしても、後で反故にする。」

 こうしたイメージが定着してしまうと、ほかに商売のある優良サプライヤであればあるほど、こうしたところとの取引に応じなくなります。

 結果として競争は減り、しかも近寄ってくるのは、ほかに商売のない二流のサプライヤばかり。これでは、外部の専門企業を使うことで得られるはずであったメリットを失うばかりです。

リスクに応じたプライシング

 そもそも、イベントの成功や五輪の招致といった事業リスクは、事業主体が負うべきものです。事業が成功した時だけの数字をもとに、事業の実施の可否を判断することに誤りがあります。事業を計画する時に、その事業が失敗したら、どれだけの損失をこうむるのかも含めて判断するのが、事業主体の仕事です。

 もし、事業リスクを分担したいのならば、あらかじめ、レベニューシェア型の契約にするなどしておけばすむことです。ただし、取引先にリスクを分担させると、それだけ、取引コストは高くなります。サプライヤにしてみれば、そのリスクに見合った課金をせざるを得ませんので、その保険料が上乗せされ、取引価格は高くなります。

 弊社でも、成功報酬型の契約を顧客から求められることがありますが、その際にはプロジェクトで想定されるリスクを考慮して、プライシングします。

 つまり、今回の騒動は、あらかじめ予見して、手を打つことができたことを放置した結果にすぎません。弊社のような数人しかいない規模のベンチャー企業でもそこまで考えて取引を行うのに、規模・スタッフ的にも充実している横浜市や東京都が、そうしたリスクを考慮せず、後でそれを取引先に押しつけようとするというのは、怠慢としかいいようがありません。

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