“分業”化するビジネス、“非分業”化する家庭ちきりんの“社会派”で行こう!(2/3 ページ)

» 2010年04月12日 08時00分 公開
[ちきりん,Chikirinの日記]

少子化の理由は家庭の“非分業”化

 ところが、ここに落とし穴があります。

 分業でも非分業でも時間は24時間しかありません。インプットが変えられないのに非分業体制によって専門性(スキルレベル、生産性)が低下すると、全体として成し遂げられることの量が減ってしまいます。

 ビジネスはこれまで“分業”化を推し進めることで成果を拡大してきましたが、家庭に関しては“非分業”化の流れのなかで、達成できる成果がどんどん縮小しているのです。

 「実は少子化はその結果ではないか」とちきりんは思っています。「非分業化による効率の低下が、家庭全体で達成できる成果の減少」、すなわち“持てる子ども数の減少”につながっているのではないかと思うのです。

出生率の推移(出典:国立社会保障・人口問題研究所)

 分業モデル(専業主婦モデル)なら子どもを2人持つのは難しくないし、3人も何とか可能でしょう。しかし、非分業モデル(共働き)では子ども1人でも大変です。2人持つには相当の覚悟が必要で、非分業モデル(共働き)で子ども3人は不可能に近いくらい難しいです。

 また、経済的にも、共働きの方が有利とは限りません。従来は夫1人が働いて、配偶者、子ども、親を全部養っていました。今は共働きで一見、世帯収入は増えていますが、実質的には豊かになっていないケースもあります。

 なぜなら、共働きモデルはさまざまなコストが高いからです。子どもを預けるコスト、料理の中間品を買ったり外食したりする割高分、親の介護を外部にお願いするコスト、職場の近くに住むための家賃の高騰分などが余分にかかります。また、専業主婦なら子どもを1人育てるのも2人育てるのも手間や費用は倍にはなりませんが、共働き家庭が子どもを2人保育園に預ければ費用は必ず倍かかります。

 このように“非分業”体制はコスト高であるため、2人分の収入があっても必ずしも常に経済的な余裕が大きくなるわけでもなく、子どもの数が増えるほど分業(専業主婦)モデルの方が有利になってきます。つまり、「分業体制を解消した家庭においては、その非効率さのために時間も家計も余裕がなくなり、そのために持てる子どもの数が少なく抑えられているのではないか」というのが、ちきりんの仮説です。

 そして、この傾向はこれからも変わらないでしょう。家庭は競争ではないので、成果の多さ(経済的ゆとりや子どもの多さ)より、生活の楽しさや生き方の好みが優先されるのは当然です。

 高度経済成長時代には、妻が家事・育児一切を引き受け、男性は家のことを忘れて超長時間働くという方式でなければ、テレビや冷蔵庫やエアコンを買うための“昨年よりずっと多い収入”を毎年確保することはできませんでした。だからみんな(ある意味では仕方なく)分業モデルを選択していたし、それが結果として高度経済成長を実現させたのです。

 しかし今は、そこまでの働き方をして手に入れたいモノをみんな見いだせません。超長時間働いて毎年給与を上げるより、家庭と仕事のバランスをとりたいと思い始めています。「分業して生産性を上げたい」という動機がありません。

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