“分業”化するビジネス、“非分業”化する家庭ちきりんの“社会派”で行こう!(1/3 ページ)

» 2010年04月12日 08時00分 公開
[ちきりん,Chikirinの日記]

「ちきりんの“社会派”で行こう!」とは?

はてなダイアリーの片隅でさまざまな話題をちょっと違った視点から扱う匿名ブロガー“ちきりん”さん。政治や経済から、社会、芸能まで鋭い分析眼で読み解く“ちきりんワールド”をご堪能ください。

※本記事は、「Chikirinの日記」において、2008年5月29日に掲載されたエントリーを再構成したコラムです。


 社会には、「どんどん“分業”が進むもの」と「どんどん“非分業”が進むもの」があります。

 一般的にビジネスの現場では、どんどん分業が進んでいます。昔は全部1つの会社で作っていたのに、今は液晶はA社、バッテリーはB社、プラスティック成形はC社と、全部違うメーカーが作っていたりします。1つの工場の中でも、組み立てる人、塗装する人、検品する人などに分離され、開発は日本、組み立ては台湾という国際的な分業も多くなっています。

 事務職も同じで、昔は総務部が人事も総務も法務も全部担当していたのに、今は人事部、総務部、法務部に分かれ、人事部の中がさらに、採用だけやる人、給与計算だけやる人、労組対策を専門にやる人、と分離してきています。

 ところが反対に、家庭では非分業化が進行しています。

 昔は、「家事と育児だけする人=妻」「稼ぐだけの人=夫」「勉強だけの人=子ども」「留守番と近所付き合いの担当=おじいちゃん&おばあちゃん」のように、家族はそれぞれの役割を分業して担当し、各人は1業務専任でした。

 ところが今は、夫も妻も両方が働くし、家事もする。家庭では分業をやめて、非分業化する動きが主流となりつつあります。なぜ、ビジネスでは分業が進み、家庭では非分業が進んでいるのでしょう?

共働き等世帯数の推移(出典:男女共同参画局)

 理由は「分業体制と生産性」の関係にあります。効率を上げるためには分業体制が適しているのです。分業すれば、スキルは高度に専門化して生産性があがります。料理は妻がずっと作っていた方がおいしいし、洗濯も掃除もたまに夫にやってもらうより、妻が自分でやった方が手早く終わらせられます。

 だから、効率や生産性が重要なビジネス現場では分業が進みます。ところが、効率を追求すると、面白くなくなります。分業による高効率は楽しくないのです。「家事と育児だけの毎日」「仕事のみの人生」をつまらないと感じ始める人が増えているから、家庭では分業をやめるところが増えているのです。

 実は工場でもセル方式といって、“非分業”を取り入れる流れが一部にあります。これも、「あまりに分業すると従業員がやる気をなくしてしまうから」です。分業というのは行き過ぎると“歯車感覚”が出てきて、面白くなくなるのです。

       1|2|3 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.