ドキュメンタリー映画『TOKYO TO OSAKA』が伝える“ピストバイク”の魅力郷好文の“うふふ”マーケティング(2/2 ページ)

» 2010年04月08日 08時00分 公開
[郷好文,Business Media 誠]
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バイク meets Japan

 監督は『バイシクル・フィルム・フェスティバル』(自転車映像作品を集めた国際イベント)に通いながら、いつか自分の映画を出品しようと思った。それも長年自分の身体の一部でもあるフィックスドギア・バイクのフィーリングを伝える映像で。

 「米国内のいろんな街に住む友人に『やらないか』ってメールを出したんだ。ロサンゼルス、サンフランシスコ、ニューヨーク、テキサス。だいたい20代で、学生やアーティスト、デザイナー、科学者、ミュージシャン、みんなバイクの愛好者。それで集まった12人さ」

撮影:Jason Lam

 人種はいろいろ、職種もいろいろ。その12人を撮影担当、モーターサイクリスト(撮影者同乗用バイク)、車両運搬担当、そして監督の4人で撮影。日本の異文化に遭遇し、競輪場のホンモノに触れ、サドルを並べて走った。日本のサイクリストたちもたくさん登場。彼、彼女たちとの交流もバイクという“世界共通語”があるゆえ。

 「どこが最も大変な道のりでしたか?」

 「日本の道はとても安全で走りやすいね。でも、雨の日の狭いハイウエイはつらかった。自動車やトラックに幅寄せされて、水がはねるし。左側はハイウエイの壁や断崖絶壁、あるときは田んぼだった」

 特にキツかったのは奈良の山道。アップダウンの繰り返しで、音を上げそうになった行程だった。20数段あるロードバイクだってキツいと思う。それがたった1つの固定のギア比なのだから、当たり前だ。なぜそんなバイクで長距離を行くのか。

フィックスドギアの魅力

 「13台のバイクはどんなタイプ?」と問うと、「Chinelli(チネリ)」「Fuji」「GT」「Somec(ソメック)」「Orbea(オルベア)」「De Bernardi(ベルナルディ)」「Felt(フェルト)」と返答あり。フレームだけで何十万円もするものばかり。ギアレシオもカスタマイズ。ビジネスサイトのインタビューでこんな質問をする私はどうかしているが、許してくれたまえ。余談だが私の乗るアマチャリ(多段ロードバイク)、バーテープだけチネリだ。

撮影:Jason Lam

 「フィックスドギア・バイクの良さとは何ですか?」

 「ダイレクト・フィーリングだね」と監督。

 自転車の原形とも言えるシンプルな2枚のギア、そぎ落したシルエットが生み出す走行フィーリング。自分の足が回っただけ前に進む、道路が自分のものになる一体感。「本来、プロ向けの固定ギア車がここまでアマチュアに広がったのは、自転車の起源、その文化に“直接触れたい”気持ちからじゃないか」と監督は言う。

 「住んでいる町で長距離を走れれば、350マイルも走れる。その向こうの海外に行くのも自然なことさ」

 池袋から渋谷までせいぜい片道5マイル。でもその5マイルは次の10マイル、50マイルに通じる。350マイルを35分に凝縮したドキュメンタリー映画が、世界中にダイレクト・フィーリングを広める。私もすっかりピストバイクに“フィックスド(ハマった)”されてしまった。

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