“ETC型”新卒社員の潜在力を生かせますか?(1/2 ページ)

» 2010年04月07日 08時00分 公開
[松本真治,INSIGHT NOW!]
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著者プロフィール:松本真治(まつもと・しんじ)

有限会社ワースプランニング代表取締役、人材・組織開発コンサルタント。


 今年の新入社員は「ETC型」だという。日本生産性本部が毎年の新卒入社社員のタイプの命名を行っているが、世相を反映していて、なかなか面白い。多様化する現代社会の中で一律的なタイプ命名に関しては時代錯誤の面も否めないが、そのネーミングの詳細を見ると、「なるほど」とうならせる点もあり、考えさせられることも多々ある。ちょっと聞いただけでは分からない今年のネーミングは奥が深い。

 2009年の新卒入社社員は、入社時こそ内定取り消しなどが社会問題化したように厳しい状況であったが、実際の就職活動時はリーマンショック前であり、比較的売り手市場に近いものがあった。ところが、2010年の新卒入社社員の就職戦線は一転して厳しい状況下におかれた。リーマンショック後の環境激変により、多くの企業の業績悪化に伴い採用も慎重になった逆風下での買い手市場となったのだ。

 このような厳しい就職戦線を勝ち抜いてきただけに、秘めたる潜在力はあるようだ。特に彼ら彼女らの情報革新はめざましく、Twitterやスマートフォンといった新たな情報ツールの登場もあり、従来に増してIT活用に長け、効率的な行動ができるスマートさを持ち備えている。

 しかし、反面、効率性を重視するあまり、直接的な人とのコミュニケーションの機会が少なくなり、対人関係においてはうまく振るまえない一面もある。ETC型と言われる1つのゆえんはここにある。

 ETCが開発され、止まらずに料金所を通過できるようになり、高速道路の走行が効率的になったが、今までのようにドライバーと徴収員との対話がなくなった。また、ETCを利用したことのある人であれば誰でも経験していることであるが、ややオーバースピードで進入すると、直前までバーが開かなく思わずブレーキを踏むことになる。ここにETC型と言われるもう1つのゆえんがある。

 つまり、今年の新入社員は、直接的なコミュニケーション不足もあり、打ち解けて心が開く、すなわち心のバーが上がるまで時間がかかるのである。したがって、上司や先輩が性急に関係性を築こうとすると、衝突したり思わぬブレーキをかけざるを得なくなったりするので要注意とのことである。

 なるほど、時代背景を踏まえ奥深い考察を交えた納得性のある人物像である。ただ納得して終わるわけにはいかない。新入社員を選定するためのリクルーティングコストはかなり必要だったはず。このETC型新卒入社社員を1日も早く1人前の社員に育成し、投資コストを回収していく使命がすでに始まっているのである。それだけにETC型社員を育成・指導する立場にある上司や先輩社員のリーダーシップのとり方が重要になってくる。

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