テクノロジー+エコロジー=景気に左右されない観光戦略松田雅央の時事日想(2/3 ページ)

» 2010年04月07日 08時00分 公開
[松田雅央,Business Media 誠]

視察・見学者が訪れるカールスルーエ市

――カールスルーエ市観光公社(KMK)について簡単にご説明下さい。

シュトルク KMKは当市の特徴を生かしたツーリズムのマーケティングを行う市の公営企業です。名前の通りメッセと国際会議場を運営し、加えて市のツーリズムも業務としています。2カ所のツーリストインフォメーションを含め職員数は23人、年間予算は約92万ユーロです。予算の内訳は人件費、事務所家賃などの経費、イベントの運営費、広報費などで市が負担します。シュトゥットガルトやミュンヘンといった大都市の観光予算とは比較になりませんが、人口28万の中規模都市としては比較的潤沢でしょう。

――「ツーリズム」と「メッセ・国際会議場運営」を1つの組織が行なっているのですね。

シュトルク カールスルーエ市を訪れる観光客のうち85%はビジネス目的です。ビジネス客は見本市・会議場・セミナー会場を利用するだけでなく、宿泊・食事をし、さらに市内観光が加わることもありますから、ツーリズムとメッセ・国際会議場運営を同一組織が行なうことは理にかなっています。例えば昨年、キリスト教民主同盟(CDU、ドイツ連邦議会与党)の全国大会が当市で開催された際、催し物の準備から宿泊まで多様なサービスを提供しました。

メッセで開催されたスポーツイベントの様子

――ツーリズムは景気の影響を強く受けると思います。昨年は大きく落ち込んだのではないでしょうか?

シュトルク 実のところ、宿泊客は1%ほどしか減少しませんでした。ほかの自治体は平均マイナス8%でしたからかなりの違いです。当市にとってのプラス要因は、費用のかかる海外旅行を止め、手近な国内旅行に切り替えた人が多かったことです。

 さらに、ビジネス客の落ち込みが小さかったことも幸いでした。カールスルーエ市へ来るビジネス客にはテクノロジー関連が多いのですが、こういった部門は経済危機の影響を比較的受けにくかったようです。またビジネス関連の旅行はそもそも時間を切り詰めた日程になっていますので、景気が悪くなっても実施するからにはこれ以上短くする余地が少ないという事情があります。

――海外からの観光客もターゲットとしていますか?

シュトルク 年間の宿泊客は延べ82万人で、そのうち20%が外国客です。日本人観光客は昨年7%も増加しました。この秋には日本で開催される観光関連の会議に出席します。ちなみに、市内の宿泊施設はそれぞれ宿泊客の数と国籍をチェックしており、当社が毎月集計しています。もう少しデータを紹介すると、宿泊客が1日に使う金額(宿泊・飲食・交通・ショッピングなど)は1人当り平均140ユーロ、素泊まりの観光客は28ユーロです。

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