テクノロジー+エコロジー=景気に左右されない観光戦略松田雅央の時事日想(1/3 ページ)

» 2010年04月07日 08時00分 公開
[松田雅央,Business Media 誠]

著者プロフィール:松田雅央(まつだまさひろ)

ドイツ・カールスルーエ市在住ジャーナリスト。東京都立大学工学研究科大学院修了後、1995年渡独。ドイツ及び欧州の環境活動やまちづくりをテーマに、執筆、講演、研究調査、視察コーディネートを行う。記事連載「EUレポート(日本経済研究所/月報)」、「環境・エネルギー先端レポート(ドイチェ・アセット・マネジメント株式会社/月次ニュースレター)」、著書に「環境先進国ドイツの今」、「ドイツ・人が主役のまちづくり」など。ドイツ・ジャーナリスト協会(DJV)会員。公式サイト:「ドイツ環境情報のページ


 今回は、筆者が住むカールスルーエ市の観光戦略を取り上げる。特別な観光スポットがあるわけではない同市が観光資源として注目するのはテクノロジーとエコロジー。この奇抜な取り合わせで世界を狙う手法とは? カールスルーエ市観光公社へのインタビューから、通常の観光都市とは一線を画す同市の観光戦略を探りたい。

 →カールスルーエ市の「顔」と「物語」を大切にする街作り

カールスルーエ市紹介の冊子(カールスルーエ市観光公社発行)

メッセや会議場も観光資源

 観光スポットがほとんどないカールスルーエ市にとって国際的に知られた文化施設として挙げられるのは、最新のメディア技術を駆使したニューメディアミュージアム「ZKM」。ここには近隣諸国のみならず、遠く日本からも見学者が訪れるそうだ。

 その他の主だった観光施設には州立歌劇場と州立自然博物館がある。そして夏の野外コンサート、師走のクリスマス市、カーニバルのパレードなど10〜30万人が来場する催しもあるが、いずれも周辺地域の市民をターゲットとした地元密着型のイベントである。そんな中、カールスルーエ市の観光客で最も多いのはテクノロジー関連のビジネス客だ。

 ビジネス客を観光客に含めるのは不思議な気もするが、宿泊・飲食・サービスを通してその地に金を落とすという点では同様である。カールスルーエ市にはドイツ最古の技術大学(現在は総合大学)やカールスルーエ研究所(昔の原子力研究所)などを中核とした研究施設や先端企業が多く立地しているため、テクノロジー関連のビジネス客が多くメッセや国際会議も頻繁に開かれる。そこでカールスルーエ市観光公社(正式名称は「カールスルーエ市メッセ・国際会議場有限会社KMK」)のツーリズム部門モニカ・シュトルク課長にお話をうかがった。

カールスルーエ研究所の原子力研究施設(左、出典:(c)FZK)、右写真は観光公社のモニカ・シュトルク課長(左)とセールスマネージャーのメラニー・カイデルさん(右)

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