コラム
» 2010年04月05日 08時00分 UPDATE

ちきりんの“社会派”で行こう!:“パワーシニア”の国、ニッポン (1/3)

シニアが早期引退を望み、優秀なら若い人でも経営の第一線で活躍する欧米の労働社会。一方、日本で経営の第一線に立っているのはシニアばかりだ、とちきりんさんは主張します。日本ではなぜシニアが強いのでしょうか。

[ちきりん,Chikirinの日記]

「ちきりんの“社会派”で行こう!」とは?

はてなダイアリーの片隅でさまざまな話題をちょっと違った視点から扱う匿名ブロガー“ちきりん”さん。政治や経済から、社会、芸能まで鋭い分析眼で読み解く“ちきりんワールド”をご堪能ください。

※本記事は、「Chikirinの日記」において、2007年8月7日、8月8日、8月9日に掲載されたエントリーを再構成したコラムです。


 ちきりんが初めて海外旅行をしたのは、もう四半世紀前にもなります。当時、欧米を旅行中にいろんなことに驚きました。例えば、ファストフードやスーパーで働く人の多くが外国人であること、人前で抱擁するカップルが目に付くこと、小売店が防犯システムを完備し“客を疑っている”こと……。

 こう書いてみると、どれもその時はびっくりしましたが、今では日本でも普通になってきたことばかりです。でも、当時ちきりんが欧米で驚いたことで、日本がその後を追っていないことが1つあります。それはシニア層の姿です。

 当時の欧米のシニア層は、日本のシニア層とはまったく違うように見えました。服装が派手で、雰囲気も明るいし、老夫婦がカフェで談笑しながらお茶やディナーを楽しんでいる様子は、“老いる”というイメージとはほど遠いものでした。昼間から、公園やカフェや美術館でゆったりとした時間を楽しんでいるのです。

 彼らと話してみると、そもそも「引退」に関する感覚が違いました。日本では「引退する」というのは、「若い者に働く場所を譲って出て行く。もしくは追い出される」くらいのイメージです。しかし欧米のシニア層にとっては、「引退できる」のは年をとった者の特権であり、希望のようでした。

シニアが引退しない日本

 彼らの話を聞いて、当時のちきりんは「日本も将来こうなるのかも」と考えました。ところが、四半世紀経った今でも、そうなる気配はまったくありません。日本では定年を迎えた人の多くが再就職するし、それどころか今後は定年自体が65歳に引き上げられます。シニア層はいつまでも引退せず働き続けるのです。

ah_tiki1.jpg 高年齢者の就業状況(2004年、出典:厚生労働省)

 経済的問題を理由に挙げる人もいますが、それだけではないでしょう。日本では、定年退職した親が再就職して働きながら、孫の教育費を援助したり、自宅に格安で息子を住まわせたりすることは少なくありません。「自分は引退するから、もうあまり援助はできないよ」という話にはならないのです。

 逆に、米国では「できるだけ早く引退したい」と考えます。マイクロソフト創業者のビル・ゲイツ氏も52歳でトップの座を退いています。一方、日本では日本航空の再建を引き受けた稲盛和夫氏は78歳、いったん退いたものの再びCEO職に返り咲いたファーストリテイリングの柳井正社長は61歳で経営の第一線に立っています。77歳の石原慎太郎都知事は再選に意欲があるとも報道されました。内閣で今一番元気に見える亀井静香金融・郵政担当大臣は73歳です。

 こういう人々を見ていると、日本は年をとった人が早期引退を望む国ではなく、「“パワーシニアの国”になるのではないか」とちきりんには思えます。60歳から80歳の間の20年は結構長いので、元気でやる気があれば相当のことができます。結果として、「若者より元気なシニア層が率いる国、ニッポン」となるわけです。

 最近は欧米だけでなく、中国や韓国でもリーダーの若返りが顕著で、40代で一流企業の社長になったり、政治リーダーになったりする人も珍しくありません。そうした世界の潮流に逆らって、日本では“パワーシニア”が大活躍している。この理由は何なのでしょう?

ah_tiki10.jpgah_tiki11.jpg 高齢者(55〜64歳)の就業率の国際比較(2000年、出典:厚生労働省)

       1|2|3 次のページへ

Copyright© 2016 ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

Loading

注目のテーマ