“マーケットイン”で米国No.1のiPhoneアプリに――柳澤康弘パンカク社長が語る『LightBike』開発(2/3 ページ)

» 2010年03月23日 08時00分 公開
[堀内彰宏,Business Media 誠]

試行錯誤のiPhoneアプリ開発

柳澤 これまでパンカクがパブリッシャーとして、『LightBike』の有料版と無料版を含めて11個のアプリケーションを出しています。受託も含めるともう少し多い数になるのですが、『LightBike』以前にも9つのiPhoneアプリを作っていて、いろいろと試行錯誤してきました。アプリを作るに当たっては、短期間で企画から実装まで行って、すぐに市場に対して評価を求めて、売れなかったら「じゃあ次を考えよう」という短いサイクルで9つのアプリケーションを作ってきました。

 特に初めは「どういう市場なのか」「どういうアプリが売れるのか」「どういう人たちがiPhoneを買っているのか」ということもまったく見えないような状況でした。

『LOVE TESTER』

 そこで1つ目は、ニュースになるようなジョークアプリとして『LOVE TESTER』を出しました。これは、iPhoneの画面に2人が指を1本ずつ置くと、2人の相性がランダムな数字で表示されるというシンプルなアプリです。ただ、1つポイントがあって、必ず2人の相性を100%にする裏コマンドが存在しています。そのため、パーティなどで狙っている娘の時だけ100%を出すための“実用アプリ兼ジョークアプリ”ということで出しました(笑)。ただ、私たちは「面白いかな」と思っていたのですが、そんなに受けずに消えてしまいました。

 次に、音楽プレイヤーのiPodと携帯電話を合わせたものがiPhoneだということで、「音楽好きなユーザーが多いのではないか」という仮説のもと、電子楽器系アプリを作ってみたものの、それもいまひとつヒットしませんでした。

 先ほどの米国App Storeの有料アプリランキングを見ていただくと分かるのですが、ゲームタイトルが非常に多いんですね。全体の3分の2くらいがゲームになるのですが、「ゲームを作らないと、ランキングに入って大きく売れるようなものはできないのではないか」ということで、「ゲームを作ってみよう」「作るしかない」となりました。ゲーム以外のタイトルでヒットしているものもあるのですが、ゲームを出して面白いと評価されてランキングに入る方が確率が高いのではないかと考えて、ゲームを作ることにしました。

ターゲットをどう設定するか

柳澤 ゲームを作るに当たってまず考えたのは、「ターゲットをどう設定するか」ということです。

 iPhoneユーザーがアプリを買う上で一番参考にするのがApp Storeのランキングページです。ほとんどのユーザーは、そこを見てアプリを購入しています。そのため、多くの売り上げをあげる(=多くのダウンロードをされる)ためには、ランキングページに入る必要があります。ただ、ランキングページに入るためには、多くのダウンロードをされていないといけない。

 「にわとりが先か、卵が先か」という関係と同じなのですが、どちらかを先に実現しなければいけないということで、私たちが目を付けたのはブログです。私たちはプロダクトアウトではなくマーケットインの方針をとっていたので、海外のブロガーの間で話題を呼ぶようなアプリを作ろうと思いました。ターゲットとなるのは海外でiPhoneアプリを紹介するブロガー、iPhoneそのものやiPhoneアプリに興味があるユーザーです。そして、毎月数百万ページビューがあるような「Gizmodo」や「Engadget」を書いている人たちに刺さるようなコンテンツを作って、パンカクのアプリの紹介を書いてもらおうという戦略を考えました。

 iPhoneアプリを紹介するようなブログを書いている人たちがどういう人たちかというと、20代後半〜40代くらいの米国在住のギーク(オタク、マニアな人のこと)たちです。そして、ガジェットが好きで、おそらくSFなども好きなのではないかと想像しました。かつ、モバイルで遊ぶアプリなので、隙間時間で遊べるように、数秒から数分、長くても3〜4分くらいで決着が付くようなライトなゲームにすることが大事、さらにはその場で友達と一緒に遊ぶことができれば、直接的な口コミを喚起できるのではないかと考えました。

 そうして誕生したのが『LightBike』です。3Dフィールド上でバイクを走らせるゲームなのですが、バイクの後ろに壁ができていって、壁にぶつかると負けというゲームです。「どこかで見たぞ」という方がいるかもしれないですが、パッと見でSF的な世界観を分かってもらえるように意識して作りました。

 また、「ちょっと面白そう」というだけだと、「わざわざブログの記事にするまでもない」ということになってしまうので、「世界初」といった新規性やニュース性が必要だと考えました。そこで私たちが考えたのが、iPhoneはマルチタッチができるので、1台のiPhoneを使って2人で向かい合って対戦をするということです。さらには、2台のiPhoneを使って、Wi-FiやBluetoothで通信をして4人で対戦をする、という仕組みを実装しました。

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