コラム
» 2010年03月22日 08時00分 UPDATE

ちきりんの“社会派”で行こう!:「就職氷河期、サイコー!」な人たち (1/3)

就職氷河期に直面したため、多くの人が希望の職に就けなかった“ロスジェネ世代”。そんなロスジェネ世代の中では、就職活動に成功した人と失敗した人との間に大きな格差ができている、とちきりんさんは主張します。

[ちきりん,Chikirinの日記]

「ちきりんの“社会派”で行こう!」とは?

はてなダイアリーの片隅でさまざまな話題をちょっと違った視点から扱う匿名ブロガー“ちきりん”さん。政治や経済から、社会、芸能まで鋭い分析眼で読み解く“ちきりんワールド”をご堪能ください。

※本記事は、「Chikirinの日記」において、2008年4月21日に掲載されたエントリーを再構成したコラムです。


 2011年卒業予定者の就職活動が本格化していますが、昨年に続き“就職氷河期”と呼ばれる状況のようです。新卒採用といえば、生まれた時期によって格差が生じる不公平さへの批判をよく聞きますが、実は「同じ時期に生まれた人の中の格差も非常に大きくなる」のが就職氷河期のもう1つの特徴です。

 この、あまり語られることのないもう1つの格差について、前回の就職氷河期(1995年〜2005年ころ)のさなかに社会に出たA君の話を例にして考えてみましょう。

ah_kyumin.jpg 大卒の求人総数・民間企業就職希望者数・求人倍率の推移(出典:リクルートワークス研究所)

むしろ“金の卵”

 現在30代半ばで、誰もが知る有名企業に勤めるA君。ロスト・ジェネレーションど真ん中世代ですが、A君は「ロスジェネと呼ばれると困惑します。僕なんかむしろ“金の卵”ですから」と言うのです。

 聞いてみると、確かに就職活動は厳しく、一流大学に通っていたA君の周りでも、留年したり麻雀にのめり込んでいたりした友人の中には、大企業はすべて落ちて、無名の中小企業に就職した人もいたとのこと。しかし、元気ではきはきした好青年で、サークルのリーダー歴もあり、学生時代から英語も熱心に勉強していたA君にとって、就職活動は大変でしたが何とかなるレベルのものでした。

 彼に“金の卵”の意味を聞いたところ、A君の勤め先を含め多くの日本企業では、彼の就職前後10年近くもの間、極端に採用数を絞ってきたため、世の中にはその世代で正社員になれずにあぶれている人が大量に発生している一方、企業内ではその層が圧倒的に不足している、ということでした。

 しかも1つ上のバブル入社世代は大量入社でレベルが揃っていないし、数が多いためにポストも足りず、部下がいない管理職がたくさんいるそうです。そのため、「人を育てる」「人を動かす」などの組織スキルやリーダーシップが身につかないまま40代後半に突入している人もたくさんいます。

 一方、A君世代は少数採用なので早くから責任のある仕事を任されているし、今後のポスト不足問題もありません。加えて、就職時に大変だった記憶があるので、一般にみんなとても勉強熱心で、英語や会計を週末に自費で学ぶ人も多いようです。

 会社からすると「非常によくできる中堅層の数が極めて少なくて困っている」という現状。リーマンショック以前の景気が良かった時期には、企業も中途採用でこの層の薄さを補おうとしたようですが、どの会社も事情は同じなので“金の卵”たちは転職市場には出てきません。

 応募してくるのは、社会に出てから10数年間、不安定な職場で数年ごとの細切れの経験を繰り返した人たちばかりで、企業側のお眼鏡にかなわないのです。というわけで、この層の不足を外から補充することもできず、世間ではロスジェネ世代と言われる年代の人たちは、大企業の中では実はむしろ“希少人材層”とみられている、という話でした。

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