海外メディアは日本に定着するのだろうか? WSジャーナル・小野由美子編集長35.8歳の時間(3/6 ページ)

» 2010年03月19日 08時00分 公開
[土肥義則,Business Media 誠]
WSJオフィスでの小野編集長

 翻訳がうまくできないという“壁”を感じたので、通訳学校に通うことにしました。将来は通訳の仕事をしたいなあ、と考えていたのですが、ひとつ不安がありました。それは男女雇用機会均等法。私は男女雇用機会均等法の、いわば1期生。しかし多くの日本の企業は女性に何を求めているのか、どんな仕事を与えればいいのか――と、いろいろなことを模索している状況。手探り状態ともいえる日本の企業に就職しても、この先どうなるか分からないという不安がありましたね。

 そして大学4年生のときに、WSJでアルバイトをすることになりました。WSJの支局長や特派員は日本語がしゃべれなかったので、私は彼らの通訳をしていました。WSJのニュースルームに初めて行ったときのことは、いまでも鮮明に覚えていますね。彼らは「何でも知りたい」という好奇心の塊のような感じ。また、ものすごく勉強していた。初めてジャーナリズムの世界に触れて、「これが本当に仕事なの?」「とても面白そう」と強く感じましたね。

ぶしつけな質問をする特派員

 アルバイトをしていて、印象に残っていることですか? そうですね……いろいろな仕事をしてきましたが、「なぜ日本人は大人でも漫画を読むのか?」といったテーマの記事をお手伝いしたことは思い出に残っていますね。バイオレンスものや露出の多い作品を批判するだけでなく、特派員と一緒に漫画家の家に話を聞きに行きました。するとその特派員は「なぜこのようなジャンルの作品を書いているのですか?」と、しゃーしゃーと聞くわけですよ(笑)。いきなりぶしつけな質問をするので、横にいた私はビックリしましたね。

 そして同行していた特派員が、このようなことを言ってきました。「1人で、漫画読者からコメントをとってきてくれ」と。いきなりだったので、ちょっとビックリしましたが、とりあえず漫画専門の書店に行ってみました。そして白い手袋をしながら立ち読みをしている人に「あなたはなぜ、このようなジャンルの漫画を読んでいるんですか?」と、しゃーしゃーと聞きました(笑)。いま振り返ってみると、とても失礼な聞き方なのですが、そのときの彼はとても好意的に答えてくれました。

 後で分かったことなのですが、その特派員は私のことを試していたんですね。WSJの記者としてやっていけるかどうかを。もしそのとき、ものおじしていたら記者になれなかったかもしれませんね。

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