海外メディアは日本に定着するのだろうか? WSジャーナル・小野由美子編集長35.8歳の時間(1/6 ページ)

» 2010年03月19日 08時00分 公開
[土肥義則,Business Media 誠]

連載「35.8歳の時間」とは:

 35.8歳――。これはBusiness Media 誠の読者の平均年齢である(アイティメディア調べ)。35〜36歳といえば、働き始めてから10年以上が経ったという世代だ。いろいろな壁にぶちあたっている人も多いだろうが、人生の先輩たちは“そのとき”をどのように乗り切ったのだろうか。

 本連載「35.8歳の時間」は各方面で活躍されてきた人にスポットを当て、“そのとき”の思いなどを語ってもらうというもの。次々と遭遇する人生の難問に対し、時に笑ったり、時に怒ったり。そんな人間の実像に迫る。


今回インタビューした、小野由美子(おの・ゆみこ)氏のプロフィール

東京出身。筑波大学国際関係学類卒業。1986年、ウォール・ストリート・ジャーナル東京支局に入社、一般ビジネスニュースを担当。1994年から1998年にかけ、ニューヨーク本社にて記者として食品、広告、小売業界を担当。1998年、東京特派員として東京支局へ転勤、社会及び個人に影響を与えた日本経済の長期低迷に関し特集記事を執筆。2002年、東京支局副支局長。2003年より東京支局長を経て、2009年6月よりウォール・ストリート・ジャーナル・ジャパン編集長。東京在住。家族は夫と娘。


1ドル=360円の時代に、ニューヨークへ

――日本の新聞社の経営悪化が止まらない。収益の柱である購読料収入と広告収入が、急減しているからだ。そのため新聞各社はデジタル関連事業で“補おう”としているものの、成功事例はほとんどない。

 日本のメディアが収益悪化に苦しむ中、米国のウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)が日本に上陸した。2009年12月、有料サイト「WSJ日本版」(年額1万6560円)がオープン。WSJの有料サイトは米国や中国などで一定の成果を収めているが、果たして日本で定着するのだろうか。その重責を担っているのが、初代編集長に抜擢された小野由美子氏だ。WSJ日本版の初代編集長とはどのような人物なのだろうか。彼女の人間像に迫った。

ニューヨークに住んでいたころの小野由美子編集長(右)

 私が4歳のとき、父親の仕事の都合でニューヨークのクイーンズに住むことになりました。JALの飛行機には鶴のマークが描かれていて、ニューヨークの飛行場に着いたとき、飛行機から階段を歩いて降りたことを覚えています。また当時は1ドル=360円の時代だったので、米国にいた多くの日本人の生活は楽ではなかったと思います。お土産モノも、安物の「made in JAPAN」が多かった(笑)。

 いきなり幼稚園に放り込まれたのですが、全く英語が分かりませんでしたね。自分の思ったことがうまく伝えられない状態が、2年ほど続きました。これはちょっとしたトラウマになっているのでしょうか……いまでも英語がうまくしゃべれなかったことを思い出すことがあります。

 そして小学校に入学し、お弁当を持って行くのですが、そこでも食文化の違いを感じました。私は母親が作ってくれたおにぎりを持って行ったのですが、それを見た同級生は「うわー、黒い!」と驚いていました。彼らにすれば、おにぎりに巻いているのりを見ることが初めて。だから「黒い」と。あまりにも恥ずかしかったので、今度はサンドイッチを持っていくことに。

 そしてお昼の時間にそのサンドイッチを食べようとすると、今度は「くさーい」と言われてしまいました。多くの米国人はサンドイッチにハムをはさんでいるのですが、私が食べようとしていたサンドイッチには卵がはさんであった。日本だと卵サンドは当たり前のように食べますが、米国人は食べません。こうした食文化の違いを知ってから、私は毎日のようにハムサンドを食べていましたね(笑)。

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