人事異動の辞令が出た……そのときあなたはどうするべきか吉田典史の時事日想(2/3 ページ)

» 2010年03月19日 08時00分 公開
[吉田典史,Business Media 誠]

 これらをタイミングよく聞くのである。相手が話す内容は、メモにしておくといい。その場でメモにするのではなく、話を終えてからが望ましい。特に相手が人事部などの役職者ならば、回答は「あなたの評価」と受け止めていいだろう。それらは、今の部署の上司が何らかの形で人事部に報告していたものである。

 ここで違和感を覚えた人もいるかもしれない。「そんな評価は関係ない! 自分はこれだけ仕事をしているし、こんなに実績を出している!」といったものだ。私も20代のころ、こういった考えだった。この思いは分からなくもないが、残念ながら、会社のカラクリを心得ていない人のとらえ方だ。会社員の評価はあくまで上司がつけるものであり、自分ではない。

 上記のような質問をくどく聞き返すのは、避けたほうがいい。相手に「こいつは異動を拒否している」と思われてしまうからだ。そうなると、マイナス評価になってしまう。私の経験で言えば、30代半ばのときに人事部の責任者から、「君は異動を拒むんだな! それは会社員を辞めるときだぞ!」と脅された経験がある。あくまでその場の空気を察知し、うまく聞き出すことを勧めたい。

評価のカラクリを踏まえた言動を取る

 新しい部署に配属されたとき、まずこのことに注意しよう。異動先の新しい上司が、異動の内示のときに人事部が言っていたことと同じかどうかだ。つまり、過去の部署(A)→人事部との面談で内示を受ける→次の部署への異動(B)といったプロセスの中で、あなたの評価は固まっているのである。

 例えば人事部員が面談の際などに、何の根拠もなく「あなたは協調性がない」とは言わない。Aの部署の責任者から聞いて、そう話していたのだ。そしてその評価が人事評価表や引継ぎなどで、Bの部署の責任者に受け継がれていくのである。上司の評価は、あなたがその会社にいる限り残る。いや、退職後も一定の期間は、人事評価表などが保管されている。私がこのあたりのことを人事部員に聞いたところ、中堅・大企業の場合はおおむね記録がよく保存されていた。

 このようにして異動の時期には、自分の評価をよく知るようにしておこう。この時期しか、知れないことでもある。ここで、さらに考えるべきことがある。A部→人事部→B部と受け継がれてきた自分の評価の中で、プラスのところを冷静にふり返ってほしい。例えば「行動力がある」とか「仕事への姿勢がとてもいい」といったものである。このプラスの面をさらに強くしていくように、日々の職場で意識してみよう。上司の前では、仕事への姿勢がいいことを具体的にアピールするのである。報告や相談を通して、いかに自分の仕事への姿勢がいいかを理解してもらおう。

 上司が「いつの日か、自分を分かってくれる」と思うのは甘い。20〜30代の人は将来、少なくなるといわれている課長や部長のポストをめぐって、激しい競争を繰り広げなくてはならない。そのとき、上司は最大の支援者になる。上司の支持がなくて、上には上がれないのが多くの会社の実態だ。しかし難しく考える必要はない。すでに上司は、Aの部署→人事部から流れてきた評価、つまり「仕事への姿勢がとてもいい」といったものがインプットされている。だから、あなたが少し演出をしただけで「確かに彼は仕事への姿勢がいいな」と思うものである。

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