日本人と違って、ドイツ人はなぜ環境意識が高いのか松田雅央の時事日想(1/4 ページ)

» 2010年03月16日 10時41分 公開
[松田雅央,Business Media 誠]

著者プロフィール:松田雅央(まつだまさひろ)

ドイツ・カールスルーエ市在住ジャーナリスト。東京都立大学工学研究科大学院修了後、1995年渡独。ドイツ及び欧州の環境活動やまちづくりをテーマに、執筆、講演、研究調査、視察コーディネートを行う。記事連載「EUレポート(日本経済研究所/月報)」、「環境・エネルギー先端レポート(ドイチェ・アセット・マネジメント株式会社/月次ニュースレター)」、著書に「環境先進国ドイツの今」、「ドイツ・人が主役のまちづくり」など。ドイツ・ジャーナリスト協会(DJV)会員。公式サイト:「ドイツ環境情報のページ


 ドイツ人の環境意識が高いのはなぜか。そしてドイツが環境大国として成功している秘密は何か。多くの日本人が抱く素朴な質問かもしれないが、一口に説明するのは難しく、ドイツで環境ジャーナリストとして活動する筆者自身、常に背景を探り続けているテーマである。

 1970年代初頭に持ち上がった原子力発電所建設反対運動(関連記事)、1980年代に深刻化した黒い森の酸性雨枯死、1986年4月のチェルノブイリ原発事故など、大きな環境問題が起きるたび、その衝撃がドイツ人の環境意識を強く刺激してきた。さらに時代を遡れば1860年代の産業革命を契機とした労働者の健康被害問題、200年前の黒い森の過剰伐採(関連記事)など、ドイツもまた世界の例に漏れず深刻な環境問題を経験し、それを克服する歴史を繰り返してきた。

 およそすべての国が何かしらの環境問題を経験しているわけだが、それを糧として市民の環境意識を高め、環境保全運動にどう結びつけるかは国によって違ってくる。ドイツに関して特記すべきはまさにこの点であり、環境大国ドイツの秘密を解き明かすキーワードの1つが環境保全団体であると筆者は確信する。

 NABU(ナブー)、BUND(ビー・ユー・エヌ・ディー)というドイツの代表的な2団体を例として、ドイツにおける環境保全団体の底力に迫ってみたい。

野鳥保護から始まったNABUの活動

 1899年に設立されたNABUはドイツの環境保全団体の草分け的な存在として、全国に約40万の会員を抱えている。設立当時、上流階級の女性の間ではきれいな鳥の羽の帽子が流行していたが、これに大きな疑問を感じた女性リナ・ヘーネルが設立した「野鳥保護連盟」が前身だ。当時の会費は大人が年50ペニヒ、子どもが10ペニヒというからかなりの低額であった。設立初年度の会員数は3500人で、最初の活動はドイツ南部の町・ギーンゲンの野鳥保護だったと記録されている。こういった歴史から、NABUのロゴには空を飛ぶコウノトリがあしらわれている。

NABU設立100周年記念冊子
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