コラム
» 2010年03月15日 08時08分 UPDATE

藤田正美の時事日想:いまニホン経済に必要なのは、アクセルかブレーキか (1/2)

「いまだに日本経済がどっちに進んでいるのか、よく分からない」と感じている人も多いのでは。“コンクリートから人へ”という民主党の政策に対し、国民は期待していたはずなのに、なぜ思い切って実行しないのだろうか。

[藤田正美,Business Media 誠]

著者プロフィール:藤田正美

「ニューズウィーク日本版」元編集長。東京大学経済学部卒業後、「週刊東洋経済」の記者・編集者として14年間の経験を積む。1985年に「よりグローバルな視点」を求めて「ニューズウィーク日本版」創刊プロジェクトに参加。1994年〜2000年に同誌編集長、2001年〜2004年3月に同誌編集主幹を勤める。2004年4月からはフリーランスとして、インターネットを中心にコラムを執筆するほか、テレビにコメンテーターとして出演。ブログ「藤田正美の世の中まるごと“Observer”


 民主党政権に有権者が託した希望はいろいろあったと思うが、そのうちの1つは、自民党の色あせた経済政策からの脱却であった。果てしなく続く道やハコモノ、そして空港。造ることがまず決まり、それを裏付けるために“ねつ造”された需要予測。そしてできてしまったことに対して誰も責任を取らない無責任体制。それを推進したのはまさに自民党の「族議員」だった。民主党になればそういった族議員がふるい落とされて、視点や立場の違う政策になると思っていたと思う。

 確かに「コンクリートから人へ」というのは国民が期待していたような変化だと言うことができる。きちんとした財源計画とこの政策がどのような成果を上げたかの検証さえ行われれば、ばらまきというような批判は恐れるに足らないと思う。

日本経済の行方

 しかし問題は日本経済の行方をどう考えるのかということにある。いまだに民主党の方向性が見えたとは言えない。それどころか、こと郵政に関しては、小泉改革を逆転させることにしかなっていないように見える。小泉改革はいろいろな歪みを生んだとはいえ、自由化あるいは市場化によって経済を効率化するという考えそのものがおかしかったわけではない。

 例えば、郵政は何といっても巨大化した郵貯、簡保が問題であった。ここに集まった資金がかつては財政投融資に流れ、そして今は国債に流れる。それが日本という国で公的な借金に歯止めがかからない原因をつくっていると言っても過言ではない。そして現政権は、この郵政を「官営金融機関」として再構築しようとしているかに見える。この弊害は、市場の論理とは別の次元で数百兆という巨額のお金が流れることだ。

 派遣労働者の首切り問題に象徴されるような「行き過ぎた自由化」を修正するのではなく、むしろ歯車を逆転させようとしている。しかしドイツの例を見てみるがいい。ドイツをはじめヨーロッパ諸国は概して労働市場の柔軟性を欠いている。企業にとってはいったん雇うとなかなか解雇ができない上、賃金コストも高い。

 ドイツは21世紀初頭のシュレーダー政権のときに、厳格な労働市場のルールを緩和するという大転換を行った。その結果、国際競争の圧力にさらされていたドイツの企業は、実質賃金を大幅に切り下げた。英エコノミストの最新号のカバーストーリーはそう分析している

 もちろんドイツと日本では社会保障の手厚さも違うし、税金などの国民負担率も違う。日本の方が「自由度」という意味では高いのだが、経済を成長させるためには、企業の力が欠かせず、なおかつ起業の力も欠かせない。そのためには柔軟な労働市場が必要であるという証明のようなものだ。

 英エコノミスト誌は自由主義経済の守護者と自認している。それだけにドイツに関しても、現在の経済政策はまずまずだとはいえ、将来的にはもっと自由化していかないと、持続的な経済成長は難しいと指摘する。もともと輸出大国のドイツは、今回の経済危機も対中輸出によって乗り切っているからだ。

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