『サマーウォーズ』サイバーテロと『サブウェイ123 激突』ハイジャックテロ、どっちが嫌か?映画でポン!(2/2 ページ)

» 2010年03月12日 08時00分 公開
[櫻井輪子,Business Media 誠]
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テロは遊びじゃねえんだ!

佐々 わし、そういうの嫌。AIの暴走ってのは『2001年宇宙の旅』のころからある設定だけど、2001年に登場した人口知能のHALには感情移入する余地があった。でも、『サマーウォーズ』のラブマシーンにはその余地もないって感じ。「動機は遊びかよ!」っていう、ね。

わこ ラブマシーンはまだ子どものAIだからしょうがないんじゃないの? 好奇心だけの存在っていう、子猫みたいなもんだと思えばかわいいもんだよ。

佐々 好奇心だけで世界を滅ぼされたらたまらんわ!

わこ そこが『サマーウォーズ』の面白いところなのに……。恨みも思想も何もない、ただの知的好奇心のみの存在によるサイバーテロだから、金で解決もできない。デンゼル・ワシントンでも交渉の余地なし。まあ、「あそこまでバーチャルに依存した状況になるのもどうよ?」と思うけど、これからネット上のテロ行為は大問題になっていくだろうし、もう身代金とか株で大損ぶっこいた恨みとか古くさくなるんじゃないの。

佐々 じゃあ、そのテロ行為を止めるのが長野の一家族ってのはいいのかよ? 某グー●ルあたりにわんさかいるはずの天才ハッカーさんたちは何やっとるんじゃ。それに、あの陣内家の構成員(+主人公)、半端なさすぎるだろ。自衛隊のちょっと言えない部隊の人から数学の天才、日本の支配階級に口利ける婆さんとか、いくら旧家とはいえそんな面子が勢揃いってありえるのか?

わこ 夏休みアニメ大作にケチつけないでよ。ありえないキャラがひとところに集まってくるのは「お約束」なの。どーでもいいキャラ出してどうすんのよ、キャラデザインの貞本義行氏だって困るっての。あんただって「キングカズマ(池沢佳主馬)かわゆす」とか言ってたじゃない。ショタコンですか。

佐々 え? キングカズマ、女の子じゃないの? 声も谷村美月ちゃんだし。女の子にしか見えないもん。

わこ どこに目つけとんじゃ。キングカズマは男子です。ひょろっとした男子中学生がバーチャル空間の孤高のヒーローってのが中二病っぽくていいんでしょ。

佐々 えー、あのポジションは『エヴァ』だったら、シンジじゃなくてアスカのポジションだから女の子がいいよー。

わこ うるさいな。爺は戦うヒロイン、夏希ちゃんのバーチャルキューティーハニーにでも萌えててください。

佐々 あー、クライマックスでのラブマシーンとのコイコイ対決の時の変身シーン、良かったねー。やっぱり世界を救う女の子は変身シーンで肌を見せないといかんよな。本人じゃなくてアバターだったのはちょっと残念だけど、和服の夏希ちゃんの変身、爺的にはたまらんかった。しかし、主人公の健二、影が薄いなあ。

わこ いわゆる巻き込まれ型の主人公だしねえ、それに戦い方がいわゆる知能戦だから地味めなのはしょうがない。でも、そこがオタク大国日本のヒーローって感じでいいかもね。体張って戦うとかじゃないあたりが、逆にリアルな感じ。今って、だって情報戦とかの方がメインでしょ、いろんな面で。『サブウェイ123 激突』のライダーだって、自分の犯罪が株価情報にどう影響するか分かってやってたし。世界情勢的にもサイバーテロのほうが今っぽいし、脅威になりうるんじゃないかな。

佐々 えー、でもネット上で何が起こってようが、ネットにアクセスしてなかったら、存在しないのと同じだもん。目に見えないものなんてわし、つまらない。

わこ そういう人にとって、世界の終わりはある日突然来ちゃうのかもね。何が起きてるのかまったく知らないまま、気がついたら終末でした、みたいな。地下鉄車両ハイジャックに巻き込まれないでいるほうが簡単かもよ。

佐々 ふーむ、ニューヨークにいようが、日本で引きこもっていようが同様に巻き込まれるサイバーテロのが嫌かも……。でも仮に世界が終わるなら、知ってても知らなくても関係ないんじゃね?

わこ あー……、まあ確かに。当事者になるとしたらリアル暴力が支配するハイジャックのほうが嫌だわ。

佐々 じゃ、やっぱり金子みすず的に「どっちも嫌」ってことで。

サマーウォーズ

バーチャル都市「OZ」があまねく広がり、生活に根ざしている近未来。夏休みに憧れの夏希先輩に頼まれて長野の旧家、陣内家を訪れた健二は携帯に送りつけられた謎のコードを解読。すると、一夜にしてOZのハッキング犯にされてしまう。OZを混乱させている人工知能ラブマシーンの存在を突き止めた健二は、個性あふれる陣内家の面々とともに、世界の危機に立ち向かう(バップ、5040円)


サブウェイ123 激突

ニューヨークの地下鉄車両がハイジャックされ、犯人を名乗るライダーは市に対し身代金1000万ドル、期限を1時間後とし、遅れた場合は1分ごとに1人ずつ乗客を殺す、と要求する。たまたま犯人と最初に接触した地下鉄職員のガーバーはそのまま交渉役に指名され、粘り強い交渉の中、事件解決の糸口を探る。さらに犯人に気に入られ、身代金を運ぶはめになるが……(ソニー・ピクチャーズエンタテインメント、4980円)


櫻井輪子(さくらい・わこ)

映画好きが高じて、コラムを書いたりもするイラストレーター。『WOWOWマガジン』『問題小説』『てぃんくる』などでイラストコラムを執筆。『Tokai Walker』の金子裕子さんのコラム「セレブ診療所」にコマ漫画を付けている。過去には『DVD&ビデオでーた』でビデオレビューのイラストコラム、『DVDでーた』で記者会見をレポするコラム『現場から櫻井輪子でした』を連載。

著書に『「へのへのもへじ」から始める 世界一カンタン! イラスト練習帳』がある。公式サイト「SakuraiWako'sめカラうりぼう」。


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