職場が変化する4月、人事異動をどのように受け入れますか?

» 2010年03月12日 08時00分 公開
[川口雅裕,INSIGHT NOW!]
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著者プロフィール

川口雅裕(かわぐち・まさひろ)

1988年リクルートコスモス(現コスモスイニシア)入社。人事部門で組織人事・制度設計・労務管理・採用・教育研修などに携わったのち、経営企画室で広報(メディア対応・IR)および経営企画を担当。2003年より株式会社マングローブ取締役・関西支社長。人事専門誌・業界誌・一般誌などにも人事関連分野で多く取り上げられていただき、ラジオ番組のレギュラーを持っていたこともあります。京都大学教育学部卒。ブログ「関西の人事コンサルタントのブログ


 人事異動を決めた経営と本人の受け止め方が、どのように一致していれば、良い異動とすることができるか。

 私自身はたまたま、人事異動の発令を受けた経験は多くはないのですが、人事部という発令する側の部署にいた関係で、その受け止められ方、異動後の活躍の度合い、本人の感想や周囲からの評判などを長く見てきています。その経験を踏まえて、異動先に好影響を与えることや、異動を良いきっかけとして自らの価値を上げる、キャリアにつなげる人はどのようにそれをとらえるものなのか、について考えてみました。

 「一からスタート」「とりあえずは勉強」と考える人は、大体うまくいきません。「未経験だから」「職場や業務のことを詳しく知らないから」といって、自分が持っているものを生かそうというよりも、知ること、教えてもらうことに集中してしまうパターンです。

 それが本心でない場合でも、まずは周りに馴染むことを目的にして、そのようなスタンスを取る人もいます。もちろん、まったく逆の「過去は知らんが俺はこうする」と言って、学ぼうとしないのは問題があるでしょうが、あまりそういう人はいません。田舎に引越してきた都会人のように、はたまた転校生のように妙に謙虚になる人が多いのですが、こういう姿勢はうまくいかないものです。

 「オレは飛ばされたのか」「それとも期待されて引っ張られたのか」などと異動の意図を考え過ぎ、後々まで引きずる人も少なくありませんが、これも良くありません。人事異動は確かに一大事かもしれませんが、なぜ自分がそこに……という理由がずっと気になってしまっているパターンです。

 その異動を決めた人の意図があって、「その人の意図に沿うように振る舞うのが正解」というように考えているのでしょう。でも、「飛ばされたんだから適当に」と開き直ったり、「期待されたんだから頑張ろう」と思ったりするのは自分勝手な話で、そういう考え方こそかえって異動の意図をはずす原因になってしまいます。

人事異動の目的は

 人事異動の目的には、仕事量・生産性の調整や事業戦略の遂行といったことから、組織の活性化、人材の育成、個別の希望や事情への配慮までさまざまなことがありますが、それらの底流に流れている最大の目的は「イノベーションを起こすこと」だと言えます。

 ある業務・職場で蓄積されたことと、別の業務・職場でつちかわれたことを、人を動かして掛け合わすことによって新しい工夫や効果、成果を生み出そうというのが人事異動を行う一番の目的であり、経営が人事異動を行う理由です。

 であるならば、異動者は異動先の人たちと、そのノウハウやスキル、視点を対等で自然な関係で公開、融合させること。そして、異動の直接の理由など気にすることなく、イノベーションを起こすことに互いに集中せねばなりません。

 それをきっかけに、異動先の職場や仕事に好影響を与え、自分のキャリアにとっても有意義な経験としていける人は、このように異動を捉えていることが多いと思います。また、そのような結果を得ることができた時には、経営者も人事も冥利に尽きるという気持ちになるものです。(川口雅裕)

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