いつまでニホンはカネを借り続けるのか 借金1000兆円時代の行方藤田正美の時事日想(1/2 ページ)

» 2010年03月08日 08時17分 公開
[藤田正美,Business Media 誠]

著者プロフィール:藤田正美

「ニューズウィーク日本版」元編集長。東京大学経済学部卒業後、「週刊東洋経済」の記者・編集者として14年間の経験を積む。1985年に「よりグローバルな視点」を求めて「ニューズウィーク日本版」創刊プロジェクトに参加。1994年〜2000年に同誌編集長、2001年〜2004年3月に同誌編集主幹を勤める。2004年4月からはフリーランスとして、インターネットを中心にコラムを執筆するほか、テレビにコメンテーターとして出演。ブログ「藤田正美の世の中まるごと“Observer”


 ギリシャの債務問題が明らかになってからというもの、「日本は大丈夫なのか?」という記事を見かける機会が増えたように思う。さすがに2010年度末で国と地方を合わせて借金がほぼ1000兆円に達するとなれば「個人の金融資産が1400兆円あるのだから大丈夫だ」という声を信用する気にはなるまい。

 ギリシャは国債を発行して債務不履行に陥ることは何とか避けた。しかし借金するためには高いコストを払わなければならない。直近の金利は、やはり借金国であるポルトガルよりも2%ポイントも高く、ドイツが払う金利の2倍だった。

消去法で国債を買っているだけ

 さて問題である。ギリシャがそれほど高い金利を払わざるをえないのに、ギリシャよりも財政状況がはるかに悪い日本はなぜ低金利で借金できるのだろうか。その答えは、要するにほとんど国内で国債を買っているからだ。2008年12月末の時点で、国債残高のうち外国持ち分はわずか7%に過ぎない。銀行や生保、公的年金、日銀、家計、年金基金などが残りを保有している。

 民間金融機関は、大企業の資金需要がないために、資金の運用先に困って国債を買っている。みずほ証券のチーフエコノミストである上野泰也氏が「消去法で国債を買っているだけ」と発言していたが、その通りだと思う。

 国内で国債を消化しているために、市場が日本政府に対して「節度」を求めるとか、金利を引き上げて「自制」を促すというようなことが起こりにくい。それでも問題は、いつまで家計などが国にカネを貸せるのだろうかということである。個人金融資産1400兆円といっても、そこには負債(住宅ローンなど)が含まれているから実際には1000兆円程度と言われる。ということになるともうほとんど余裕はないことになる。

 そうなれば海外の投資家に日本の国債を売らなければならないのだが、格付け会社は日本の格付け見通しを引き下げの方向と発表しているから、海外投資家に国債を売ろうとすれば金利の引き上げを要求される可能性が非常に高くなる。

 そう考えると、元大蔵事務次官を日本郵政のトップに起用した郵政民営化見直しというのは、国債発行の財布を持っておこうとする政府の「陰謀」なのかと勘ぐりたくもなる。郵貯や簡保は資金量で言えば300兆円。その8割は国債で運用されている。そして民営化見直しの中で、現在は最大1550万円という郵貯の預け入れ限度額を3000万円にする方針だという。

 もしこうしたことを実現すれば、金融という最も国際的な競争にさらされる産業の構造を歪めることは明らかだと思う。しかも結果的に郵貯や簡保に資金が集まったとしても、それで国債発行が楽になるわけではあるまい。なぜなら結局カネの出所は1つ、つまりは国民の財布だからである。民間銀行に預けられていた貯金がゆうちょ銀行に移動するだけである。資金そのものが増えるわけではない。

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