ほぼ電気自動車!? ――トヨタ「プリウス プラグインハイブリッド」で都内を走る神尾寿の時事日想・特別編(5/5 ページ)

» 2010年03月03日 11時44分 公開
[神尾寿,Business Media 誠]
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PHVの課題は「家庭内の充電環境整備」

 プリウス プラグインハイブリッドは現段階でかなり高い完成度を誇っており、価格の高さを抜きにすれば、今すぐ一般販売しても十分に通用するクオリティといえる。筆者の率直な感想では、3代目プリウスに50〜80万円程度のプラスαであれば、“ほぼEV”として乗れる点を鑑みても魅力的だ。EV専用車のように、街中の充電スタンド整備を待たなくても安心して乗れるため、販売価格次第ではすぐにでも一般普及が狙えるクルマだと思う。

 しかし、筆者はたとえその価格で市販されても、プリウスプラグインハイブリッドを買わない。というか、買えない。なぜなら、自宅マンションに「充電に必要な電源」がないからだ。

 これはPHVに限った話ではないが、ガレージ付きの一戸建て住宅でもないと、駐車場に充電用コンセントはない。分譲・賃貸マンションの敷地内駐車場や、屋外の一般駐車場にクルマを駐車している人は少なくない。そこに充電環境がなければ、PHVやEVが欲しくても買えないのだ。

 この課題は、不動産開発業者やマンションオーナーにとって「チャンス」ともいえる。今回試乗したプリウスプラグインハイブリッドの完成度の高さを鑑みれば、PHVは利用環境さえ整えば、一般ユーザーにとって「現実的な選択肢」になり得る。EV以上に、一般ユーザーにとって買いやすい“未来のクルマ”なのだ。あと必要なのは駐車場のコンセントだけである。

 分譲・賃貸マンションが、すぐ目の前にせまったPHVやEVの新時代に向けて、“敷地内駐車場の充電設備”を整備すれば、それは物件の付加価値向上になる。現行制度では電気会社以外の売電ができないため、電気料の課金をどうするかといった課題は生じるが、その部分も含めて新たなマンションのビジネスになりそうだ。また、今後はカーシェアリングでPHVやEVが採用される可能性が高い。充電設備付きのマンション内駐車場は、一部をカーシェアリング用途に転用することもできる。

 繰り返しになるが、プリウスプラグインハイブリッドの「PHVとしての完成度」はすこぶる高い。一般販売される2011年頃には、販売価格の低廉化にめども立つだろう。EVのみならず、PHVが加わることで、“充電するクルマ”が一般化する日は、また一歩、近づいたと言えそうだ。

プリウスプラグインハイブリッドを買うためには、駐車場に充電設備が必須。ここが課題だが、新たなビジネスチャンスにもなり得る

著者プロフィール:神尾 寿(かみお・ひさし)

IT専門誌の契約記者、大手携帯電話会社での新ビジネスの企画やマーケティング業務を経て、1999年にジャーナリストとして独立。ICT技術の進歩にフォーカスしながら、それがもたらすビジネスやサービス、社会への影響を多角的に取材している。得意分野はモバイルICT(携帯ビジネス)、自動車/ 交通ビジネス、非接触ICと電子マネー。現在はジャーナリストのほか、IRIコマース&テクノロジー社の客員研究員。2008年から日本カー・オブ・ザ・イヤー(COTY)選考委員、モバイル・プロジェクト・アワード選考委員などを勤めている。

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