ほぼ電気自動車!? ――トヨタ「プリウス プラグインハイブリッド」で都内を走る神尾寿の時事日想・特別編(3/5 ページ)

» 2010年03月03日 11時44分 公開
[神尾寿,Business Media 誠]

都内での試乗では「ほぼEV」

 今回の試乗コースは、水道橋のトヨタ自動車 東京本社から、お台場のテーマパーク「MEGA WEB」までの往復だった。ルートにもよるが距離は片道15Kmほどで、プリウスプラグインハイブリッドの基本スペックであれば、「片道ならば、すべてEVモードで行くことも可能」(トヨタ自動車)な範囲だ。また、MEGA WEBで急速充電が行われるので、帰りもEV主体で走ることができる。

 トヨタ自動車の地下駐車場で受け取ったプリウスプラグインハイブリッドは、当たり前ではあるが、外見は3代目プリウスにそっくりだ。違いは左前に設けられた充電ソケット(充電インレット)で、ここに外部電源につながった充電ケーブルがつながっている。

 充電ケーブルを外してクルマに乗り込み、スタートボタンを押す。エコドライブモニターのUIは、3代目プリウスとほぼ同じだが、エネルギーモニターのバッテリーアイコンの横には「EV走行可能距離」が加えられている。フル充電なので、走行可能距離23.4Kmと表示されていた。

フル充電時のエネルギーモニター。EV走行距離の残りが23.4Kmになっている

 プリウス プラグインハイブリッドの走りは、3代目プリウスの「EVモード」そのものだ。アクセルを踏めばスルスルと動きだし、スムーズに加速していく。それもそのはずで、同車のモーターやハイブリッドシステムは3代目プリウスのものを使っている。走らせた感覚は、まったくの「プリウスの走り」である。

 両者の違いが現れるのは、時速60Kmを超えてから。プリウスプラグインハイブリッドでは時速100KmまでEVモードで走れるため、首都高速に入って制限速度に合わせて流れに乗っても、エンジンはかからない。開発者によると「加速時など必要な出力がモーターだけだと不足すると判断すれば、(システム側が)時速100Km未満でもエンジンはかかる」とのことだが、筆者が空いている首都高を走ったかぎりでは、一度としてエンジンはかからなかった。

 プリウスなどハイブリッドカーに慣れると、急加速・急減速を避けてスムーズな運転をするクセが身につくが、そういったスムーズな運転すれば、時速100Km未満でエンジンがかかることはほとんどなさそうだ。また、フル充電からEVモードのみで走っていても、バッテリーがみるみる減っていくという感じはなかった。都内の走行パターンだと回生ブレーキによるエネルギー回収も頻繁に行われるため、EV走行の目安である航続距離23.4Km以上に走れるケースもありそうだ。

 結果として、筆者がお台場に到着したときのEV走行比率は100%。燃費は99.9Km(エンジンを一切使わなかったので)というスコアを叩きだした。別に筆者は、過度にエコドライブをしたわけではない。プリウスに慣れたオーナーならば、おそらく似たような結果になっただろう。その点でプリウス プラグインハイブリッドは、極めて完成度が高い。プリウスをちょっと改良しただけで、ここまで“ほぼEV”なクルマになってしまうというのは、あらためて驚きである。

お台場に到着した時点のエネルギーモニター。約15Kmを走り、エンジンは一度も使わなかった。そのためEVが100%になっている。なお水道橋からお台場までは首都高も使い、流れに乗った「普通の運転」をしたことを強調しておく

 また、プリウス プラグインハイブリッドの「EVモード」以外のところに目を向けると、高速走行時の安定性や静粛性、完成度の高いブレーキシステムなども高く評価できる。これはベースとなった3代目プリウスで大きく進化したメリットを継承したからであるが、三菱のiMiEVなどEV専用車と比べると、“普通のクルマ”として見た完成度が高い。また各種安全装備が充実している点も忘れてはならないポイントだろう。プリウスプラグインハイブリッドは、無理にクルマの利用スタイルを変えなくても、特に不自由なく、日常的な利用シーンではEVっぽく使うことができるのだ。

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