ほぼ電気自動車!? ――トヨタ「プリウス プラグインハイブリッド」で都内を走る神尾寿の時事日想・特別編(1/5 ページ)

» 2010年03月03日 11時44分 公開
[神尾寿,Business Media 誠]

 自動車業界における、2010年の注目キーワードの1つが「電気自動車」(以下、EV)だ。昨年、三菱自動車が発売したiMiEVの一般向け販売が本格化し(参照記事)、日産自動車もEV「リーフ」を今年後半に発売する。国内では、EV向けの充電設備設置を発表する事業者が相次いでおり、昨年のハイブリッドカーブームに続いて、一般メディアではEVが脚光を浴びる機会が増えている。

 しかし、EVが本格的に一般普及するには、充電インフラの整備はもちろんのこと、「航続距離の短さ」や「充電時間の長さ」などシステム的な課題も少なくない。すでに普及しているクルマのように使うには、技術や運用面で解決しなければならないハードルが残されているのがEVの現状である。

 そのような中で、すでに実用化・一般普及段階にあるハイブリッドカーを改良し、短距離利用であればEVのように使える「プラグインハイブリッドカー」(以下、PHV)への期待が高まっている。すでにトヨタ自動車が、3代目プリウスをベースにした「プリウス プラグインハイブリッド」を試験的に販売(参照記事)。日米欧で特定顧客向けに600台を出荷し、2011年には一般販売も開始するという。

 今回、筆者はこのプリウス プラグインハイブリッドに試乗する機会を得た。本記事では、同車の試乗レポートをお伝えするとともに、プラグインハイブリッドの可能性について考えてみたい。

プリウス プラグインハイブリッド。3代目プリウスがベースになっているため、見た目は現行プリウスとほとんど変わらない

プラグインハイブリッドは、電気自動車とハイブリッド車のいいとこ取り

 現在、EVの最大の弱点は「航続距離の短さ」である。

 電気を貯蔵する電池は、保存できるエネルギー密度の量がガソリンの50分の1しかない。そのためガソリン車並みに航続距離を伸ばすには搭載する電池を大きくするしかないのだが、大型電池を積むとクルマの総重量が増え、エネルギー利用効率や運動性能が悪くなってしまう。EVの利用形態が近距離用途で、なおかつ街中に多数の充電インフラが必要とされているのは、このためである。

 PHVは、この「EVの弱点」を現実的なアプローチで解消する。従来のハイブリッドカー(以下、HV)より大型の電池を搭載して“EVモードの走行距離”を伸ばす一方で、ガソリンエンジンとのハイブリッド機構も搭載しているため、電池切れで走れなくなる心配がない。クルマとして、エネルギー利用効率と運動性能を鑑みながら、搭載する電池のサイズを決められるのだ。しかもPHVの電池は家庭用電源や急速充電器から充電できるので、EVモード中心で走れば、“ほぼEV”として利用できる。EVのように完全な排出ガスゼロは見込めないが、航続距離など使い勝手の面で無理がなく、クルマのバランス設計でも無理をしなくていいのが、PHVのメリットと言える。

 むろん、PHVがすべてにおいてEVに勝るわけではない。PHVはEVより機構が複雑なため、将来的な低コスト化が難しい。また制御システムも複雑であり、EVに比べると、PHVの製造が可能なメーカーは限られるだろう。モーターとバッテリーをモジュール化し、水平分業型のメーカービジネスモデルを構築するのも、PHVでは難しいと言える。

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