家賃を下げるための“たったひとつの冴えたやりかた”(3/3 ページ)

» 2010年03月03日 08時00分 公開
[中ノ森清訓,INSIGHT NOW!]
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家賃交渉を行う際の留意点

 最後に、家賃交渉を行う際の留意点について、2点ほど述べておきます。

 こうして種明かしをすると、多くの会社が自前で類似物件の情報を調べて、自分たちでやろうと考えます。しかし、仕組みもなく何件かの不動産会社に電話して得た情報ではあまりにも限りがあり、それが実際の相場を反映している保証はありません。

 弊社でも、賃料交渉の代行ならいくらでもできますが、適正賃料の算出は必要な仕組みの構築が簡単にはできないため、家賃の引き下げではこうした会社と協力して行っています。

 あるチェーンストアは、こうした家賃交渉代行会社を起用して、1年ほど家賃引き下げプロジェクトを行った後、ノウハウがたまったとして、自分たちで賃料交渉部門を立ち上げたとの話をうかがいました。個人的には、この取り組みは頓挫するか、あまり成果が上がらないと予想しています。このチェーンストアがためるべきはノウハウではなく、細かいメッシュのリアルの賃料データです。しかも、それらは3カ月もすれば、相場が動いてしまっているのでクズになってしまいます。よほど大きなチェーンでないとそうした情報の収集・蓄積は難しく、単純に人を張り付けても、成果は出ないのではと考えます。

 家賃交渉代行会社はほどんどが成功報酬なのですが、引き下げに成功し、実際の支払いが生じると、すべて自分たちのものにしたいというのが人情のようです。ただ、ここは彼らの本当のノウハウの部分には敬意を示し、それをいかに確保するかを考える方が得策です。

 幸いにして、家賃交渉代行会社はかなりの数ありますので、「それらを競争させる」「完全成功報酬型ではなく、固定+成果連動フィーとする」など、ここでも調達が必要です。チェーン店の場合、カテゴリソーシングも有効です。家賃交渉代行会社ごとに、得意とする地域やビル店舗、郊外型、SC内など得意物件タイプが異なるため、すべての対象物件情報をすべて渡した上で、自分たちの得意な物件のみに絞った場合など、どのような組み方があるか提案してもらった上で、得意分野ごとに数社を使い分けるという方法です。

 もう1つは、解約通知は特に切替コストの大きい物件の時には、本当に転居の覚悟がある時のみに使うべきという点です。

 確かに解約通知を出さないと、貸主が真剣に取り合ってくれない可能性があります。弊社のケースでも解約通知をして初めて、家賃が下がりました。とはいえ、そのような貸主は「現在の賃料は適正である」「次の貸し手の算段がついている」など自分なりの考え方があると思われるので、本当に解約通知を出せる状況にならないと交渉になりません。

 ある貸主さんから聞いた話ですが、「賃料引き下げプロジェクトの一貫でどの物件も一律10%の賃料引き下げをお願いしている。条件に応じなければ退去する」とFAX1枚で通告してきた企業があったそうです。この貸主は退去されても構わなかったので、その旨を告げたところ、担当者とその上司が血相を変えてあわてて謝罪に来たそうです。それが、その後の交渉にどれだけ影響したかは、容易に想像がつくでしょう。

 このように代替案もない中で、一方的に最後通告する方法は、あまりにも稚拙で、不動産だけでなく、いかなる商取引でも絶対に真似をしてはいけません。ちなみに、この相手はちまたでは名門の誉れの高い大手上場企業の購買部門であったとのことです。まだまだ日本は平和ですね。(中ノ森清訓)

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