コラム
» 2010年03月02日 08時00分 UPDATE

松田雅央の時事日想:果たしてトラムは安全なのか 日本とドイツの違い (1/2)

トラム(路面電車)といえば電車と比べあまりスピードを出さないため、“比較的安全”といったイメージを持っている人も多いかもしれない。しかしドイツ・デュッセルドルフ市では事故件数がやや増加傾向に。果たしてトラムは安全なのだろうか。

[松田雅央,Business Media 誠]

著者プロフィール:松田雅央(まつだまさひろ)

ドイツ・カールスルーエ市在住ジャーナリスト。東京都立大学工学研究科大学院修了後、1995年渡独。ドイツ及び欧州の環境活動やまちづくりをテーマに、執筆、講演、研究調査、視察コーディネートを行う。記事連載「EUレポート(日本経済研究所/月報)」、「環境・エネルギー先端レポート(ドイチェ・アセット・マネジメント株式会社/月次ニュースレター)」、著書に「環境先進国ドイツの今」、「ドイツ・人が主役のまちづくり」など。ドイツ・ジャーナリスト協会(DJV)会員。公式サイト:「ドイツ環境情報のページ


 今年に入り、筆者の住むカールスルーエ市のトラム(路面電車)で立て続けに2件の大きな事故が発生した。トラムは生活に欠かせない身近な乗り物であり、またバスや自動車よりずっと安全というイメージが強いだけに、2週間で2件の事故は地元の話題となっている。

中心市街地での重大事故

 1件目は中心市街地のポイント(線路の交差点)での衝突事故だった。本来なら2本のトラムがすれ違うはずなのに1本のトラムが誤ってカーブしてしまい、ほぼ正面衝突となった。どちらのトラムも運転席は大破し、運転手の1人は足を切断する重症。死者こそなかったものの、計33人の負傷者を出し近年にない大事故となってしまった。

 第1の原因は運転手の人為的なミスであり、それに加えて作動するはずの自動停止装置が働かなかった(あるいはスイッチが切られていた?)ようである。もう1件の事故は市郊外のトラム追突で、こちらは20人あまりの乗客と運転手が負傷している。

yd_matuda1.jpgyd_matuda2.jpg トラムの脱線事故(2001年)、右:復旧作業

 カールスルーエ市のトラム事故統計は見つからなかったので、代わりにデュッセルドルフ市を例にしたい。人口60万のデュッセルドルフ市には13路線のトラムが走り、2009年の事故発生件数は128件、重傷者数は25人だった。死亡事故も発生してはいるが、それでも年間乗客数が「数千万人」に達する中でこの数だから、やはりトラムはかなり安全な乗り物といって間違いないだろう。

2006 2007 2008 2009
事故の合計件数 99 88 150 128
歩行者との事故件数 13 16 28 18
トラムが原因の事故件数 17 13 26 25
死亡事故件数 1 3 2 5
重傷者数 13 11 22 25

 バラつきはあるが、ここ4年をみると事故件数は若干増加傾向のようだ。特にトラム、自動車、歩行者の密度が高い中心市街地ではどうしても接触事故が多くなる。とりわけ、トラムと歩行者が共存する道路「トランジットモール」は、その性格上どうしても接触事故が起きやすい(関連記事)

 ただし矛盾するようだが、トランジットモールで重大事故が発生することはほとんどない。トランジットモールでは歩行者も運転手も危険を承知し、トラムは時速10キロ程度のノロノロ運転をするので重大事故が起き難いのだ。死亡事故に代表される重大事故は、中心市街地をちょっと離れ、トラムが速度を上げ始める地域の方が発生しやすい。

yd_matuda3.jpgyd_matuda4.jpg カールスルーエのトランジットモー(左)、架線の点検作業(右)

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