コラム
» 2010年03月01日 08時00分 UPDATE

ちきりんの“社会派”で行こう!:貧困問題を深刻化させる、“私的セーフティネット”の危機 (1/3)

金銭的、身体的な問題が起こったとしても、預貯金や保険、仕事、家族などの助けがあれば、通常の社会生活を送ることができます。しかし、こうした“私的セーフティネット”とでも言うべき助けを持っているのは偏った人だけではないか、とちきりんさんは説きます。

[ちきりん,Chikirinの日記]

「ちきりんの“社会派”で行こう!」とは?

はてなダイアリーの片隅でさまざまな話題をちょっと違った視点から扱う匿名ブロガー“ちきりん”さん。政治や経済から、社会、芸能まで鋭い分析眼で読み解く“ちきりんワールド”をご堪能ください。

※本記事は、「Chikirinの日記」において、2008年3月30日と3月31日に掲載されたエントリーを再構成したコラムです。


 「不況で学生の就職活動が厳しい」というニュースはよく聞きますが、それでも健康な20代の日本人であれば、本人の不満や将来への不安は別として、今日明日食べていくことはできるでしょう。

 しかし、身体的、精神的に重度の障害がある場合はそれさえ困難です。視覚や聴覚の障害があったり、歩行障害で車いすに乗っていたりすると、アルバイトを見つけるだけでも極めて難しいでしょう。そうした人が独立して食べていくことは、障害者年金など福祉の支援を得た上でも容易ではありません。

 これは、単身で高齢になった場合や、何らかの理由で保護者を失った子どもも同じです。高齢で体力や思考力が衰え、慢性疾患を抱えれば、少々の年金が得られても独立して生活できなくなるし、小学生以下の子どもに至っては、1人では住む場所も確保できないはずです。

 では、現在これらの人がどうやって暮らしているかといえば、福祉の支援を受けながら、まったく身寄りがない場合は比較的多くの人が公的な施設で暮らしていますが、誰かしら身寄りがある場合は主要な支援は“家族”が提供している場合が多いでしょう。

 例えば、障害がある子どもの多くは成人後もずっと親が面倒をみているし、親の死後は兄弟が面倒をみる場合もあります。年老いた両親や祖父母は、子どもや孫が同居して支えたり、もしくは子どもらが資金を出し合って施設費用を負担することも一般的でしょう。保護者を失った子どもを、親族が引き取る場合もあります。

 このように、いわゆる“社会的弱者”の生活は、もちろん社会福祉でも支援はされているものの、いまだその多くの部分は家族や親族による私的扶助によって支えられています。今回はこの私的扶助、もしくは、イザという時に私的扶助を受けられる環境という意味での“私的セーフティネット”について考えてみます。

ah_kousya.jpg 高齢者の住宅の所有関係(出典:平成18年 高齢社会白書)
       1|2|3 次のページへ

Copyright© 2016 ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

Loading

注目のテーマ