“闇金ウシジマくん”が蠢く……有名ブランドの裏事情相場英雄の時事日想(2/3 ページ)

» 2010年02月25日 08時00分 公開
[相場英雄,Business Media 誠]

 海外高級ブランド故、他の国内流通業の賃金よりは給与水準は上だ。しかし「1着数十万円もするスーツや宝飾品を身につけていたのでは、給与だけでは生活できなくなる。社員割引を適用しても、相当な高額品」(別の関係筋)というのは明白だ。

 そこに信販会社や消費者金融から融資を受ける社員たちが増加していくという下地があるのだ。社員の多くは、当該ブランドに勤めている以上、周囲の視線や対外的な面子もあり、高価な自社製品を買い続けねばならないというジレンマから脱することができない。次第に資金繰りがタイトになり、「次なるステップに移行する社員が増加する」(同)という。筆者が耳にした情報は、この段階の話なのだ。

ブランドイメージを死守せよ

 「御社の社員が一度に座席を50も確保したのはどう考えてもおかしい」――。

 フランスの高級ブランドの総務部にこんな連絡が入ったのは数カ月前のことだ。調べてみると、社員の1人が会社の経費を使って、公共交通機関の座席を大量に確保。その直後、金券ショップにチケットを持ち込み、換金したというのだ。

 社内調査の結果、この女性社員は多重債務者であることが判明した。借金返済のために借金を重ね、最終的にカネを調達できずに追い込まれた典型例だったという。

 彼女の場合もつまずきの第一歩は自社製品の買い過ぎだ。月々の生活費にも窮したことから、「友人らに社員割引を適用して自社製品をさばいたこともあったが、最終的に行き詰まった」(同社関係者)。そこで会社の名を悪用し、公共交通機関のチケットを転売する方法を考えついたのだとか。横領と呼ぶにはあまりにも稚拙なスキームだが、こうしたケースは氷山の一角だという。「百貨店のバイヤーを抱き込んで架空の発注書を偽造するようなケースさえある」(同)というから驚くほかはない。

 こうした事情はほとんど新聞やテレビで報じられることはない。なぜならば「すべて社内でフタをしてしまうから」(事情通)にほかならない。

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