小さな街の、カーニバルにつまっている要素とは松田雅央の時事日想(1/2 ページ)

» 2010年02月23日 13時00分 公開
[松田雅央,Business Media 誠]

著者プロフィール:松田雅央(まつだまさひろ)

ドイツ・カールスルーエ市在住ジャーナリスト。東京都立大学工学研究科大学院修了後、1995年渡独。ドイツ及び欧州の環境活動やまちづくりをテーマに、執筆、講演、研究調査、視察コーディネートを行う。記事連載「EUレポート(日本経済研究所/月報)」、「環境・エネルギー先端レポート(ドイチェ・アセット・マネジメント株式会社/月次ニュースレター)」、著書に「環境先進国ドイツの今」、「ドイツ・人が主役のまちづくり」など。ドイツ・ジャーナリスト協会(DJV)会員。公式サイト:「ドイツ環境情報のページ


 カーニバル(謝肉祭)といえば「リオのカーニバル」に代表されるサンバや華やかなパレードを思い浮かべる人も多いのではないだろうか。カーニバルは世界各地のカトリック文化圏を中心に2月ごろに行われ、ドイツでもやはりカトリックの盛んな地域を中心に祭りやパレードがある。

 国内で有名なのはケルンやマインツなど、古くから自由都市として栄えた街のカーニバルだ。そのほかの街や村でも大小さまざまなカーニバルが行われ、規模や派手さではかなわないが田舎のカーニバルにもなかなか味わいがある。

このハレ舞台のためパレード参加者は数カ月前から準備してきた

カトリックの教え+ゲルマンの風習

 カーニバルは「四旬節」の前に行われ、年によって開催日は変化する。四旬節とは復活祭の46日前の「灰の水曜日」から復活祭の前日までの期間を指し、その間は慎み深い食生活を送り、自らの行いを振り返って考える習わしであった。その四旬節に入る前に思いっきり飲み食いし、羽目をはずしてどんちゃん騒ぎを楽しむのがカーニバルのひとつの側面だ。宗教的な節制の前に飽食するとは、人間の欲望に忠実で実に人間くさい習慣ではないか。

 カーニバルがこの時期に行われるのには、ほかにも理由があった。

 昔この時期には作物が採れず、残っている野菜といえば前の年に漬けた瓶詰めキュウリくらいしかなかった。春に向けて食生活はさらに厳しくなるから「今あるものが腐らないうちに食べてしまおう」「ちょうど4月の復活祭まで節食期間も重なるので都合がいい」というわけである。もちろん現代は春にかけて食糧が乏しくなるようなことはないが、今でも昔の習慣に従いごちそうやカーニバル独特のお菓子を食べる。そういえば先日、知り合いのドイツ主婦からカーニバル時によく作るというミルクで蒸したまんじゅうをいただいた。

壮大な仮装行列

 筆者の住むカールスルーエ市の今年のカーニバルは2月2日の火曜日に開催された。街のメインストリート約5キロを、ブラスバンド、コスチュームを着たグループ、山車(だし)など、約50のグループが練り歩き、人出はおよそ25万人。人口30万弱の街にこれだけ集まるのだからたいしたものだ。

 パレードの参加者は山車からアメやお菓子をまき、地域独特の掛け声をかけながら練り歩く。言葉に特別な意味はないがカーニバルを盛り上げるのには欠かせない。マインツならば「Halau !(ハラーウ!)」、ケルン「Alaaf !(アラーフ!)」、カールスルーエ市のある黒い森地方ならば「Nari, Naro !(ナリ、ナロ!)」といった具合である。

山車からは飴やお菓子がまかれ、沿道には紙ふぶきが舞う(左)、地元カーニバルチームの山車。設立95周年ということらしい(右)

 筆者の地元カールスルーエのカーニバルを初めて見たときは、テレビで見たリオのカーニバルのようなものを想像していただけに、ずいぶん地味だと思ったものだ。ドイツのカーニバルは多分にゲルマンの風習と結びついた「土着的な雰囲気」が強いように思う。

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