鳩山政権に、“お金”が集まらない日藤田正美の時事日想(1/2 ページ)

» 2010年02月22日 08時20分 公開
[藤田正美,Business Media 誠]

著者プロフィール:藤田正美

「ニューズウィーク日本版」元編集長。東京大学経済学部卒業後、「週刊東洋経済」の記者・編集者として14年間の経験を積む。1985年に「よりグローバルな視点」を求めて「ニューズウィーク日本版」創刊プロジェクトに参加。1994年〜2000年に同誌編集長、2001年〜2004年3月に同誌編集主幹を勤める。2004年4月からはフリーランスとして、インターネットを中心にコラムを執筆するほか、テレビにコメンテーターとして出演。ブログ「藤田正美の世の中まるごと“Observer”


 経済にうとい政治家は、洋の東西を問わず少なくないように思える。1992年の米大統領選挙。共和党はブッシュ(パパ)大統領が2期目を目指し、民主党はクリントン(アーカンソー州知事)が12年続いた共和党政権の打倒を狙っていた。当時、ブッシュ大統領は前年の湾岸戦争に勝利し、外交で得点を稼いでいた(湾岸戦争は米国にとってベトナム戦争の悪夢を打ち払う戦争になったために、ブッシュへの支持が高かったのである)。

 それに対して、クリントン陣営が何を争点に戦うのかということが議論になったとき、選挙参謀であるジェームズ・カービルが、「It's the economy, stupid(当然、経済でしょう)」と言って、選挙に勝った。それ以来、このセリフがよく引用されるようになったのである。

投資先として安全な国

 小泉政権では経済学者の竹中平蔵氏が大臣として起用されたこともあって、経済政策としては一本筋が通っていた。もちろんその政策は納得できるものと納得できないものがあったが、何をやろうとしているのかは見えていたと思う。それから後の安倍政権、福田政権、そして麻生政権は、政策の背後にある理念が見えず、結局は従来の自民党にまつわる利害集団におもねるような政策が多かった(だから国民は愛想をつかしたのである)。

 それも1つの原因となって、民主党への政権交代が起きたのだが、いまも経済政策の背後にどんな理念があるのかはよく見えない。2010年度予算が過去最大になったことは、結局は民主党が「大きな政府」を目指すことを意味しているのか、というと「4年間は消費税率を引き上げない」ことをマニフェストでうたっているし、鳩山首相も折に触れて「引き上げない」と言及している。

 しかし先進国中最大の財政赤字を抱える日本は、果たしてそんな状態を続けられるのだろうか。実際、ギリシャの財政危機でユーロ圏が揺れている。ユーロ圏には加盟国に対する財政規律がある。財政赤字のシーリングを名目GDP(国内総生産)の3%以内に抑えるというものだ。現在は一時的に緩和を認めているが、ギリシャはこれをはるかに上回る財政赤字を計上したという。もともとギリシャの統計に隠ぺいがあり、そこに投資銀行のゴールドマンサックスが絡んでいたかもという新たな疑惑まで生まれている。

 ギリシャが返済不能(デフォルト)に陥らないように支援するかどうか、この点についてユーロ圏諸国は揺れている。もし支援することになれば、ギリシャに続いてポルトガルやアイルランド、スペインなども財政危機を理由に支援を要請するかもしれない。もともとユーロ圏は加盟国のそれなりに厳格な財政運営を前提としているだけに、安易な支援も難しい。

 問題は、市場つまりは投資家がいつまでこういった国の借金を安全な投資先として認めるかにかかっている。英エコノミスト誌にこんな言葉があった。「アテネから米国までどれくらいあるのか。そしてその途中にはどんな国があるのか」というのである。これは地図上の話をしているのではなくて、投資先としての国債の安全性に関する話だという。

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