あなたの知らない“ハイサワー”の世界――博水社社長・田中秀子さん(後編)嶋田淑之の「この人に逢いたい!」(1/7 ページ)

» 2010年02月21日 13時30分 公開
[嶋田淑之,Business Media 誠]
焼酎を割って飲むのが一般的なハイサワーだが、日本酒やワインを割るとカクテルのような味わいになる。写真は、本記事担当編集イチオシの“日本酒+ハイサワーうめ”

 日本の酒業界は、今、未曾有の危機を迎えている。「飲みニケーション」文化の衰退、若者のお酒離れ、生活者の買い控えなど、その逆風は強烈だ。しかし、そうした過酷な経営環境をものともせずに善戦している企業がある。「わるならハイサワー」のCMでお馴染み、ハイサワーのメーカーである博水社だ。今回は、その3代目社長・田中秀子さんのインタビュー後編をお送りする。

 前編では、定番である焼酎だけでなく、日本酒、ウイスキー、ワイン、泡盛、ジンなど、実に多くのお酒を割ることができる、ハイサワーならではの豊穣な世界についてお聞きした。そして、そもそもハイサワーという清涼飲料水がどのような経緯の中から生まれてきたのか、博水社の激動の歴史の一端をうかがった。

 後編では、上記3重苦の業界にあって善戦している田中秀子3代目社長が、どのような経営・リーダーシップを行っているのかについて、“不変”“革新”“同族経営”の3つのポイントを中心に聞いていこう。

 →あなたの知らない“ハイサワー”の世界――博水社社長・田中秀子さん(前編)

時代がどう変化しても守らなくてはいけないもの――博水社の「不変」

博水社3代目社長、田中秀子さん

 初代がラムネを製造・販売する田中武雄商店を立ち上げたのが1928年。会社組織にしたのが1952年。そして先代がハイサワーを開発したのが1980年。実に80年を超える長い歴史を刻みながら、清涼飲料水一筋に歩んできた博水社の歴史を眺めると、そこには、一本筋が通っていることが実感される。現代のように、環境変化が速く、振り幅が大きな時代にあっても、それが微動だにしていないことに驚かされる。

 経営環境がどんなに変化したとしても、同社として、決して変えてはいけないことは何なのか? 田中秀子さんにお聞きしてみた。

 「創業者の田中武雄のときから受け継がれている家訓があります。それは“口に入れるものなので、味はインチキしてはいけない”ということ。これは何があっても決して変えてはいけない、弊社の『不変』の部分です。

 ハイサワーが誕生して30年間、例えばレモン果汁に関しては、イタリア・シシリー島の信頼すべき生産契約農家が栽培しているレモン以外は一切使用していません。さらに、農薬や苦味を出さず、最高のおいしい果汁だけを出すために“ファーストラン”(=一番搾り)以外は、決して使いません。コスト的には厳しいものがありますが、しかし、最高のレモン果汁へのこだわりは、何があっても、絶対に変えません」

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