このまま“暗いトンネル”の世界へ……2010年版のヤミ金事情(2/3 ページ)

» 2010年02月19日 11時16分 公開
[土肥義則,Business Media 誠]

 改正貸金業法を議論する金融庁のプロジェクトチームでも、ヤミ金問題が取り上げられている。警察庁は「生活経済対策管理官を新設し、ヤミ金などの生活経済事犯への対策を強化」することを強調した。しかし弁護士の宇都宮健児氏は「ヤミ金相談のため警察を訪れた際、いまだに『借りたお金は返せ』『元本だけでも返せ』といった対応をとる警察官がいる」と指摘。さらに「ヤミ金業者の取り締まりについて、弁護士、司法書士、警察などが連携を強化すべきではないか」と訴えた。

 なぜ水面下で、ヤミ金が増えているのだろうか。その最大の要因は、2007年から2010年6月までに段階的に施行される改正貸金業法だ。この法律は多重債務者問題を解決するために、2006年12月に成立・公布されたもの。段階的に規制を強化し、2010年6月めどに貸出残高を収入の3分の1までとする総量規制のほか、上限金利を現行の年29.2%から15〜20%に引き下げる。

 しかし総量規制の導入を見越して、消費者金融の貸付残高が減少の一途をたどっている。2006年3月末、消費者向けの貸付残高は10兆7000億円だったが、2009年3月末には6兆6000億円に減少。また成約率の低迷にも歯止めがかからない。消費者金融大手4社の成約率は62%(2006年4月〜6月)から、32%(2009年7月〜9月)へと30ポイントも減少した。

消費者金融大手4社の成約率の推移(出典:金融庁)

 さらに上限金利の引き下げに対応するため、貸付金利も低下している。消費者金融大手4社の平均貸付金利は23%(2006年3月)から17.8%(2009年9月)に。貸付残高の減少と金利の低下は、貸金業者の体力を急速にむしばんでいった。業者数はピーク時(1986年)に4万7000社ほどあったが、2009年10月末時点では4752社と10分の1ほどに減少。現在も廃業する業者は後をたたず、「完全施行後にはさらに減少するだろう」(大手消費者金融)という見方が一般的だ。

貸金業者数の推移(出典:金融庁)

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