自治体大合併が政権交代の引き金? “小沢流選挙”のしたたかさ相場英雄の時事日想(2/2 ページ)

» 2010年02月18日 08時00分 公開
[相場英雄,Business Media 誠]
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小沢幹事長のしたたかさ

 現在、政権与党の民主党は幹部2人が金銭スキャンダルの渦中にあり、加えて米軍普天間基地移設をめぐるドタバタが批判を浴び、各種の世論調査でも「不支持」が「支持」を上回る状態にある。夏の参議院選挙で苦戦必至との論調も目立ち始めた。筆者もこうした見方をうのみにしてきた1人だ。ここまでは永田町発のニュースでご存じの向きが多いはずだ。が、元同僚の現役記者の見立ては違う。

 東京地検特捜部との駆け引きが続く中でも、小沢一郎幹事長は丹念に地方回りを実施した。元同僚の目撃談によれば「パーティー会場では幹事長の周囲に地方の首長が列を成し、小沢氏がいすに腰を掛けるタイミングが一度もなかった」という。もちろん、政権与党の幹事長であり、首長連があいさつをするのは当たり前の行動と言える。が、列を成してでも小沢氏に会いたかった首長連には思惑があるのだ。

 その答えが、小沢氏が導入した陳情システムだ。同氏は昨年、政治と密接に絡んできた「陳情」を党本部幹事長室に一本化した。地方での直接の窓口は、かつての町村議員ではなく、民主党の県連支部となった。筆者のみるところ、これは町村議員激減の穴を埋める手法であり、小沢氏のしたたかな戦略の1つだ。

 陳情の窓口となるのは、民主党の地元選出の国会議員、あるいは今後出馬予定の候補者たちだ。陳情を通じて地元有権者と接する間、議員(あるいは候補者)は、中央の政策や国会の様子、ひいては民主党の首長や政策をつぶさに伝えることができるというわけだ。「好き嫌いは別にしても、小沢氏の政治システム構築力は巧み」という元同僚の言葉には説得力があった。

 苦戦が予想される民主党の参議院選挙だが、案外健闘するのかもしれない。民主党が善戦するとしたら、「町村議員激減」のメリット・デメリットを分析し尽くした小沢氏の勝利だと言えるだろう。

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