それなのに、公債費という借金返済はそれほど減ってはいません。私はここに、日本の地方財政の最大の問題があると考えています。
日本の地方財政制度は「建設公債主義」、つまり「道路や下水道などの基盤整備や施設建設などの公共事業にしか公債発行(=借金)をしてはいけない」ということになっています(地方財政法で明記されています)。
それなら公共事業が減れば、いずれ借金は減るはずです。それが減らないのはなぜか。実は国自らが建設公債主義の原則を破り、地方自治体が公共事業以外(人件費や行政サービスの支出向け)の借金をすることを認めているのです。
この代表的なものに「臨時財政対策債」があります。地方交付税特別会計の入口(税収)と出口(支出額)のギャップがあまりに大きく、国と地方で借金を折半していると第2回で書きましたが、その地方分の借金がこの臨時財政対策債です。
つまりこれは、地方自治体から言わせれば地方交付税として当然もらえる分を、財務省が手当てしてくれないのでやむを得ず各地方自治体の借金として負担している、ということです。一方、財務省に言わせれば、これは単なる地方の借金でしかありません。この臨時財政対策債の発行額が、2007年度は2兆6000億円、2010年度には5兆1000億円にふくらんでいます。
そして、この借金の返済原資は、将来の地方交付税ということになっています。完全な自転車操業です。ある自治体では、公債費(借金返済)の4割〜5割が臨時財政対策債などの建設公債以外の借金になっているという話も聞きます。
ここまで読んでいただけた方は、お分かりになったでしょう。地方財政の問題はもはや「無駄な公共事業を削れば借金が減るし、財政も健全化する」などという考えでは解決し得ないレベルまで悪化しているということです。ここから先、歳出の削減によって地方財政を健全化させようというのであれば、誰もが無駄とは思わない歳出を削りこむしかないのです。
その代表が教育、医療、社会保障でしょう。「命を守りたい」という民主党政権になって大幅にふくらむことが想定されているものばかりです。あるいは、かなり減った公共事業をさらに削るということです。これを削るということは何を意味するのでしょうか。
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