第27鉄 運行終了まであと1カ月――さらば、寝台特急「北陸」杉山淳一の +R Style(4/5 ページ)

» 2010年02月15日 20時15分 公開
[杉山淳一,Business Media 誠]

深夜発、早朝着――それが航空機や新幹線に対抗できた理由

 日本の寝台特急には2種類ある。1つはゴージャスなリゾートタイプ。個室が中心で、食堂車やロビーなど豪華な設備が自慢だ。雑誌やテレビで紹介される寝台特急はほとんどこのタイプで、上野−札幌間の「カシオペア」「北斗星」、大阪−上野間の「トワイライトエクスプレス」の3種類。これらは名前を聞いたことがある人も多いだろう。

 もう1つは実用的な素泊まりタイプ。個室も一部あるものの、昔ながらのカーテン仕切りの寝台が中心で、食堂車はなし。今回紹介する「北陸」がまさにこちら。他に上野−青森間の「あけぼの」、大阪−青森間の「日本海」も実用タイプ。東京−高松の「サンライズ瀬戸」、東京−出雲市の「サンライズ出雲」は個室中心だが食堂車はないので、どちらかというとこちらの実用タイプに分類できそうだ。

 「北陸」の実用性は運行時刻を見るとよく分かる。下り列車の上野発は23時03分、富山着05時34分、金沢着06時26分。上り列車は金沢発22時18分、富山発23時09分、上野着06時19分。夜遅く出て、朝早く着く。乗車日に残業を片づけ、食事を済ませて一杯ひっかけて乗り込み、翌日は朝から行動を開始できる。飛行機の最終便のあとに出発して、早朝便の到着前に現地入りできるというわけだ。寝ながら移動すれば時間を効率的に使える。もっとも、同じ時間帯には夜行バスというライバルがあって、東京−金沢間の「ドリーム金沢号」は下り22時40分発で07時10分着。上りは22時00分発で06時13分着。こちらも便利。

 料金を比較すると、航空機は通常期片道2万1900円。事前割引で最安値が1万1000円。「北陸」は1万7110円。北陸フリーきっぷを使うと片道あたり1万700円。高速バスは片道7810円、往復割引だと片道あたり7055円。最安値同士で比較して、「北陸」は飛行機とはほぼ同額、高速バスより約3600円高くなる。確かにバスは安いけれど、たった3600円の差でベッドに横になれるなら、私は「北陸」のほうがいい。つまり「北陸」は決して他の交通機関に見劣りしない列車である。

 B寝台料金の6300円は高いという声もあって、確かに最近の5000円クラスのビジネスホテルに比べればこの狭さはどうかと思うし、トイレもシャワーも共用だ。しかし、乗車券や特急券と合わせた合計と、他の交通手段の料金を比較すればまずまずといったところ。値段に関しては後で説明させていただくとして、特急料金を3000円上げて、寝台料金を3300円とすれば、きっと多くの人々が納得してくれると思う。国鉄時代の料金政策をそのまま残してしまったことが、寝台特急不人気の原因の1つだと思う。

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