川口雅裕(かわぐち・まさひろ)
1988年リクルートコスモス(現コスモスイニシア)入社。人事部門で組織人事・制度設計・労務管理・採用・教育研修などに携わったのち、経営企画室で広報(メディア対応・IR)および経営企画を担当。2003年より株式会社マングローブ取締役・関西支社長。人事専門誌・業界誌・一般誌などにも人事関連分野で多く取り上げられていただき、ラジオ番組のレギュラーを持っていたこともあります。京都大学教育学部卒。ブログ「関西の人事コンサルタントのブログ」
「評価の目線がバラバラであること」がしばしば非難されますが、それは本当にダメなのでしょうか?
例えば人事評価で「彼のこの半年の働きを何点とするか」「彼を昇格させるかどうか」、例えば採用面接で「彼を採用とするか、不採用とするか」といった評価を行う場合、その評価に参加する人たちの意見や考え方に相違があるのは困りものだ、と考える人が多いようです。
だいたい、評価の主催者は「評価に参加する人の目線を揃えたい」「評価の観点や基準を統一したい」と言います。「評価者研修を実施したい」と考えるのは、「評価の目線がバラバラなのはマズイ」という認識からです。
評価する人によって意見が異なっていると議論や調整が必要で、結論を得るまでに時間がかかってしまうし、そのプロセスで余計な組織の力学に巻き込まれて面倒になる。この点で、評価の主催者(事務局)が困るという気持ちは分かります。評価する対象があり、その評価に参加する人が集まってきて、「せーのっ」でフタを開けて意見が同じであれば楽に違いありません。「評価を効率化したい」と望むなら、評価する目線がバラバラでないほうが良いということです。
しかし、評価者の目線、つまり評価の観点(どこを見るか)・基準(どのレベルで良しとするか)が揃うことには問題もあります。「どこがどの程度良い」「どこが良くない」「こうしてもらいたい」「こうなってもらいたい」という意見が議論せずとも一致しているということは、皆が一様に、それも暗黙のうちに同じモノを求めているということです。
つまり、その評価者たちがかけている“同じような眼鏡”にかなわない人は入れないし、育ちもしません。異質の排除です。これを続けていくと、人材の多様性が失われていくことにつながる可能性があります。
評価の目的は、短期的には「配分(給与・賞与)の決定」「役割(昇進・昇格)の決定」「育成」「動機付け」です。評価の結果によって配分や役割を決め、評価の内容や伝え方によって成長を促し、モチベーション向上を図ります。
忘れられがちなのは、中長期的な評価の効用もしくは影響です。それは、評価が人材を規定していく、つまりどのような評価をしているかはどのような人材が揃うのかに大きく影響するということです。被評価者が「評価されたい」と思うのは当然で、だんだんと高い評価を受けやすい言動をとるようになっていきます。
逆に、評価されないことはしないし、そういう評価に合わない人は去ることになります。統一された視点による画一的な評価は、組織や人材をそのようにして規定していくわけですが、それで良いのかどうか。バラバラ目線による多様な評価は、悪いことでないばかりか、組織の未来にとって重要ではないかと考えます。(川口雅裕)
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