『サザエさん』なんかどこが面白い? という世知辛い皆さんへ(2/2 ページ)

» 2010年02月09日 08時00分 公開
[中村修治,INSIGHT NOW!]
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見るべき人物はカツオとサブちゃん

 サザエさんの家はいまだに黒電話で、テレビは液晶の薄型ではない。夕食は家族でちゃぶ台を囲む。携帯電話は出てこない。急に雨が降ったら、波平さんやマスオさんは、駅前の公衆電話からワカメちゃんを呼び出す。そんな「イマドキないやろう」という突っ込みが入るのが、サザエさんのイメージである。私の娘(=中学校2年生)は「何が面白いのか分からん」と正直な感想を述べる。チャンネルは「サザエさん」なのだが……ほとんど見ていない。ビジネス的に、マーケティング的に見ても、確かにあまり刺激はない。

 しかし、よくよく見てみると……いたずら好きのカツオと、三河屋のサブちゃんは、面白い。

 カツオがサザエさんや波平さんに怒られないようにするための知恵のめぐらせ方や、親戚のノリスケさんやタイコさんを活用しながら欲しいモノを手に入れる戦略には頭が下がる。カツオはこのまま大きくなったら、立派なビジネスマンになる気がする。カツオみたいな部下は、きっと重宝がられる。

 さらに可能性があるのは、三河屋のサブちゃんである。あれだけ世帯別の顧客管理ができているビジネスなんて今時ない。サブちゃんが、サザエさんの家周辺の300世帯を把握して、同じような商売をしているとしたら……。米や酒の必需品の取り扱いなので月間に1世帯3万円の売り上げがあると仮定すると、えっ、サブちゃん1人で月間900万円の売り上げ!? サブちゃんを数十人雇えば、完璧な購買代行ビジネスの完成である。

 不景気である。マスオさんや穴子さんの勤める商社の業績も、きっと厳しいだろう。出版不況で、裏の伊佐坂先生の本も売れていないだろう。花沢不動産は目も当てられない惨状かもしれない。国民的アニメ『サザエさん』で、一番おいしいビジネスをしているのは、実はあの好青年サブちゃんなのである。ある意味、恐るべし『サザエさん』である。(中村修治)

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