何もないところに欲を作り出す――「ブラウザ三国志」のビジネスモデル野島美保の“仮想世界”のビジネスデザイン(2/3 ページ)

» 2010年02月09日 08時00分 公開
[野島美保,Business Media 誠]

ブラウザ三国志の魅力

 広告収入が主流と考えられているソーシャルゲーム業界において、ユーザー課金を正面から狙ったのが、AQインタラクティブの「ブラウザ三国志」である。もともとSNS用に作られたものではないが、2009年8月にmixiアプリとして「ブラウザ三国志 for mixi」がリリースされた。「ブラウザ三国志 for mixi」では、2010年1月末現在の登録ユーザーは45万6000人、この1カ月で17万人の伸びをみせている人気ゲームだ。

 配下となる武将を育て、施設を建設して自分の城下町を作り、ほかのユーザーと合戦をして陣地を広げていくゲームである。武将はカード式になっており、他ユーザーとトレードすることもできる。このゲームの究極の目的は、ゲーム世界で天下をとることである。天下をとるには、武力で戦うだけでなく、同盟を組んで味方を増やすなど、ユーザー同士の外交が必須となる。

城下町を建設していく(出典:ブラウザ三国志)

 ブラウザ三国志では、ゲームアイテム課金をしている。城下町での施設建設には数時間かかるが、その建設時間を省略する「即完了」に150CP(150円)など、ゲームを続けていく上であったらよいと思うような機能やさまざまなバーチャルアイテムが整備されている。上級者になってくると、強い武将カードが当たるくじ引き(ガチャ)も人気だ。

さまざまな武将カードがある(出典:ブラウザ三国志)

 このゲームがマネタイズ志向であるのは、こうしたきめ細かいアイテム販売システムだけではない。課金を可能にしているのは、SNSコミュニティとバーチャルのゲームコミュニティとのバランスのとり方が絶妙であるからだと、筆者は分析している。

 ほかのアプリと同様に、SNS友人を招待して一緒にプレイすることもできる。しかし、陣地を増やし天下をとろうとすると、数百人規模の仲間が必要となる。そのため、ゲームを進めていくにつれ、通常のSNS友人だけでは立ち行かなくなってくる。また、招待制を使っても、友人の隣に城を構えることはできず、ランダム配置となるため、必然的に近所の他人と付き合わなければならない状況に置かれる。

 このゲームをしていると「遠くの親友よりも近くの他人」ということを痛感させられる。AQインタラクティブの石井武ネットワークコンテンツ事業部長は「同盟を組むか対戦するか、他ユーザーと接点が生まれるようなゲーム作りをしている」と語る。

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