“あいつは採用ミス”とレッテルを貼る上司こそ、おかしいのだ吉田典史の時事日想(3/4 ページ)

» 2010年02月05日 08時00分 公開
[吉田典史,Business Media 誠]

 20代の社員が数年以内に退職していくことについても語った。

 「そもそも、管理職たちは自らの部下を育てようとしているのでしょうか。私が社会人になった1980年代に比べて、そうした意識が低くなっているように思えます。会社もかつてに比べると、社員のライフプランにあまり関心を持っていない。社員を雇っている以上、衣食住にはもっと注意を払わないといけないと思います」

 特に「住」の問題が深刻だという。「生涯働いてアパート暮らしにしかならないようでは、その社員は残らないでしょう。このあたりがきちんとできていないと、人が育たないからいつまでも経営が安定しません」

 中村氏の言葉からは、中小企業の採用のあり方や問題点が見えてくる。これらの事実を踏まえると、採用ミスと安易にレッテルを貼ることの危うさがよく分かる。

 さて私の考えを補足すると、大企業はおおむね、社宅や住宅補助などの面では依然として充実したものとなっている。これまでに30社近くの独身寮を取材で拝見したが、その印象で言えば「ライフプラン育成にはそれなりに熱心」と感じる。むしろ問題は、賃金の伸び悩みだろう。しかし今後も売り上げが伸び悩むため、この問題は解決できないのではないだろうか。そう考えると、社会のあり方を低成長にあわせたものにしていく必要がある。例えば、小学校〜大学までの学費、税金、公的保険などは議論の対象にするべきだろう。

 また、正社員の解雇規制も段階的に緩める必要がある。ただし、私は一部の有識者が唱えるように「40歳以上の解雇要件の緩和」には与しない。特定の人たちだけを狙うのは不当であるからだ。20〜30代にもその範囲を広げるべきである。

 このように若い人たちにも解雇の適用を広げるときに警戒すべきは、採用ミスである。会社は自らの採用ミスを棚上げして、20〜30代を解雇にする可能性が出てくるからだ。その意味でも、採用ミスをする会社に厳しい小林氏や中村氏のスタンスは紹介するに値する。だから、この時事日想の連載で取り上げたのだ。

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