ヘッドフォンも“たのしいほう”にいきませんか郷好文の“うふふ”マーケティング(1/3 ページ)

» 2010年02月04日 08時00分 公開
[郷好文,Business Media 誠]

著者プロフィール:郷 好文

マーケティング・リサーチ、新規事業の開発、海外駐在を経て、1999年〜2008年までコンサルティングファームにてマネジメント・コンサルタントとして、事業戦略・マーケティング戦略など多数のプロジェクトに参画。2009年9月、株式会社ことばを設立。12月、異能のコンサルティング集団アンサー・コンサルティングLLPの設立とともに参画。コンサルタント・エッセイストの仕事に加えて、クリエイター支援・創作品販売の「utte(うって)」事業、ギャラリー&スペース「アートマルシェ神田」の運営に携わる。著書に『顧客視点の成長シナリオ』(ファーストプレス)など、印刷業界誌『プリバリ[印]』で「マーケティング価値校」を連載中。中小企業診断士。ブログ「cotobike


 灰色や黒のヘッドフォンで妥協するリスナーがいた。彼らはこう言った。

 「ヘッドフォンは音質がすべてさ。色やカタチなんてどうでもいい。そんなの選ぶ時間がもったいないよ」

 毎日毎日、揃いも揃って灰色服を着て音を聴く彼らに、色を楽しむ発想はカケラもなかった。けれどもモモは違った。彼女はこう言った。

 「楽しいヘッドフォンが欲しい!」

 “たのしいほう”が好きなモモは、これまでにないカスタムメイドのヘッドフォンを想像した。左右非対称もOKのカバー(ハウジング)には、星やキラキラ、生地のようなテキスタイル柄も。コードはネックレスで、スライダーはペンダント、パッケージはきらめく宝石箱。下図がその初期イメージだ。

“たのしいほう”にいきませんか?

 2009年12月24日に発売されたFOSTEX(フォステクス)カンパニーの「“おでかけしたくなる、楽しくなる”あなただけのヘッドフォン『kotori』」。モモこと、フォスター電機“kotori office”の今田百(こんた・もも)さんらが描いた初期イメージそのままの商品となった。

 kotoriは全17パーツそれぞれを15色から選べる世界初のカスタムメイド・ヘッドフォン。17パーツとはイヤーパッド、ベースの前と後、リング、カバー、ロゴプレート、ブッシング(以上は左右×2)、コード、スライダー、プラグキャップ。

 左右対称にするも非対称にするもお好み次第。まっさらからのカラーコーデが大変なら、POPやSWEET、COOLやVIVIDなど決められたパターンからセレクトすることもできる。Web上でサクサク自在にデザインできるのが楽しい。その組み合わせの種類は20ケタ(9852京6125兆3356億9340万通り)にのぼるという。

 こんな自由発想の商品を発売したフォステクスカンパニーは、FOSTEXブランドの開発・販売を担当。親会社のフォスター電機は、世界中のトップエンジニアやミュージシャンに支持される音響機器OEM製造会社。だからなのか、サンプル品を視聴すると音が隅々まで聴こえる。弦楽器が特にいい。まるで室内楽奏者がそこにいるかのように響く。この音質で3600円という価格はとても良心的だ。製品開発の方向を見ると、3人の“たのしいほう”の開発者がいた。

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