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» 2010年02月03日 08時00分 UPDATE

-コデラ的-Slow-Life-:ZEISSのトイカメラ? 「beirette vsn 2」

カメラ屋のジャンクコーナーで発見した「beirette vsn 2」。共産圏の安いカメラの典型的な特徴が出ていて、とことんまで機能が削られていた。

[小寺信良,Business Media 誠]

 カメラのジャンク屋巡りをしていると、時にとてつもないものを偶然掘り出してしまうことがある。今回購入したカメラも、これまでまったく筆者のアンテナに引っかからなかったもので、買う時にはまったく何の予備知識もなかったものである。

 beirette(バイレッテ)のvsn 2というそのカメラはジャンクコーナーに置かれていたが、特に壊れているというわけではなさそうだった。強いて挙げれば、ファインダーがゴミだらけでよく見えないという以外は、レンズもきれいだしシャッターも切れる。相当安っぽいが、底を見るとCARL ZEISS JENA(カール・ツァイス イエナ)という刻印がある。「嘘つけ」という気持ち半分で購入してみた。3150円である。

ah_IMG1833.jpg ジャンクコーナーで見つけた、beirette vsn 2
ah_IMG1836.jpg 底面にはCARL ZEISS JENAの刻印が

 後でネットで調べてみたが、ほとんど情報がない。少ない情報からいろいろ調べていくと、Beiretteというカメラは、1958年に旧東ドイツのBeier(バイエル)社が作った、小型のビューファインダー型カメラが原型のようだ。さらにさかのぼると、1939年ころから蛇腹式のカメラのブランドで使用されていたという。言わば名門ブランドである。第二次世界大戦後にBoots社に売却され、以降はBoots Beirette BLというブランドになったようである。

 しかし製造がBeierでもなくBootsでもなくCARL ZEISS JENAとなっているということは、共産圏特有の事情で、同スペックのカメラがいろんな工場で製造されていたということなのだろう。レンズのMeritarは、廉価のトリプレットではよく知られたレンズである。これも本当にZEISS社のレンズなのかは定かではない。

ah_IMG1839.jpg レンズはMeritar 45mm/F 2.8

 ボディ全体がプラスチックで、カメラのレベルとしてはLOMOのLC-Aといい勝負か、もしかすると作りではちょっと負けているくらいである。LC-Aは設計が新しいので、ちゃんと電池を使った自動露出であるが、こちらのほうは露出計も距離計も、当然電池も使わない完全マニュアルカメラだ。

 vsn 2ということは、当然初代のvsnというカメラがあったはずだ。調べた限りでは、初代vsnの方は軍艦部が金属製だったようで、vsn 2になってコストダウンというか、レベルダウンしたものらしい。

 レンズ下にPRIOMATという刻印があるが、この位置の銘板はシャッター機構のブランドを表していることが多い。RRIOMATとは旧東ドイツ時代のZIESS IKON社が1952年に開発したシャッターで、蛇腹型のカメラに多数使用されたものであるという。

ah_IMG1842.jpg シャッターレバーは前面にあり、下に下げる

コストダウンした姿なのか、元々トイカメラなのか

 共産圏のカメラは、安いカメラとして作るととことんまで機能を削るので、資本主義社会から見ればおもちゃのようにも見える。しかしLC-Aもそうだったように、おそらくこれは大真面目に作られた廉価カメラなのだろうと思う。

 さまざまなスペックが、大胆に共通化されている。例えばフィルム感度のリングは、そのままシャッタースピードと兼用である。シャッタースピードは最高で1/125秒。以下、1/60秒、1/30秒、B(バルブ)の4段階しかない。フラッシュのシンクロは、1/30秒で行う。

ah_IMG1845.jpg シャッタースピードは最高1/125秒

 ASA100で設定すると、シャッタースピードは1/125秒固定となる。絞りは、お天気マークと一緒になっている。晴れマークはF16、雨マークはF5.6である。露出計がない場合は、このアイコンを見ながら露出を決め、あとはフィルムのラチチュード頼みである。まあきちんと絞りの数字も書いてあるので、別途露出計があれば、自分で設定して撮影することができるので、良心的と言えば良心的である。

ah_IMG1843.jpg 絞りと連動するお天気マーク

 フォーカスは最短で60センチまで。ただし距離計がないので、目分量である。この手のカメラは絞り目で撮るというのが原則なので、被写界深度の深さに頼ることで、あまりピンぼけも起こらないだろうという予測の元に設計されているようだ。

 果たしてどんな写りをするのだろうか。

小寺 信良

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映像系エンジニア/アナリスト。テレビ番組の編集者としてバラエティ、報道、コマーシャルなどを手がけたのち、CGアーティストとして独立。そのユニークな文章と鋭いツッコミが人気を博し、さまざまな媒体で執筆活動を行っている。最新著作はITmedia +D LifeStyleでのコラムをまとめた「メディア進化社会」(洋泉社 amazonで購入)。


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