東京で集めた税金は誰のモノか坂村宗彦の地方財政から格差を見る(3/3 ページ)

» 2010年02月02日 08時00分 公開
[坂村宗彦,Business Media 誠]
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東京都の税金は誰のもの?

 第1回で書いた通り、全国の国税収入55兆1000億円のうち地方交付税特別会計に14兆2000億円が配分されていて、その割合は25.8%です。同じ割合で計算すると、東京国税局の税収のうち東京都分と想定した20兆円に25.8%をかけた結果の約5兆2000億円が地方交付税特別会計に収められます。しかし、東京都は地方交付税の交付団体ではないので、それは返ってきません。

 つまり、東京都内から徴収される税金の約2割が地方交付税特別会計に、5割以上がそれを除いた国の財源になるという結果となります。都内の在住・在勤者からすれば、取られ放題という感がありますが、これでも「東京都内の税収を東京都が取りすぎているので、国や地方交付税特別会計にもっと回せ」という議論があります。そう主張しているのは財務省です。そこには地方財政の窮状という問題があります。

 第1回で、地方交付税に回す国税の一定割合の金額(入口)は14兆6000億円で、繰越金を含めて地方交付税で配分した金額(出口)は15兆2000億円と書きました。しかし、実は2007年度は多少景気が良かったせいもあって国税も地方税も収入が多く、地方税が多い分、これを補う役割の地方交付税額がそれほど大きくなかったので、入口の税額と出口の配分額に大きな差がなかったのです。

平成19年度地方交付税等の姿(出典:総務省自治財政局「平成19年度地方財政計画の概要」)

 しかし、このような年は近年では珍しく、2009年や2010年などは税収が大幅に落ち込む一方、支出は減らないので、地方交付税額が大きくふくらみ、出口の額が入口の額が大きく上回ることになるでしょう。この入口の額が出口の額を下回ることから生じるマイナスが重なってきたために、地方交付税特別会計は今、数十兆円の借入金を抱えています。

 最近増えている借入分は国(財務省)と地方全体(所管は総務省)で「割り勘(正しくは折半)」にして負担することが決まっているのですが、ある時期までは国税収入で借金を返すことにしていました。財務省はここに危機感を持ち、地方の借金は地方交付税特別会計の中でどうにかしろと主張し、その中で「東京都などリッチな団体がいくらでもあるじゃないか。そこから地方の借金を返せ。さもなくば都税を国税に振り替えろ」という主張をしているため、東京都は必死に反論しています(参照リンク)

 国と東京都の言い分はどちらが正しいのか、それは立場によって異なります。一概にどちらが正しいとは言えないところがあります。言うまでもなく国は途方もない借金を抱えているので、これ以上の借金をすることで「国の信用を落とし、国債が売れなくなるのでは」と心配しています。財務省には“財政健全化”という錦の御旗があります。一方、東京都は「国が作った財政制度の元で(わずか2割程度しか充当されない)都税でやりくりをしているのだ。それでも本来やるべき施策を十分に行えないのだ」という主張をしています。「東京都だけを狙い撃ちにした制度変更など許せるか」というわけです。

 しかし、国と東京都で見解が一致する可能性があるところもあるのです。それは地方交付税特別会計、ひいては地方に配分する地方交付税の額が大きすぎるのではないか、という点です。「地方は無駄遣いばかりしているのではないか」「もっと支出を絞るべきではないか(それをやらずに放漫財政を許してきたから、夕張市のような例が生じるのではないか)」という主張です。

 その主張をどう考えればよいのか? それを第3回では書きます。

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