第26鉄 バレンタインデーには江ノ島へイルミネーションを見に行こう――湘南モノレール&江ノ島電鉄杉山淳一の +R Style(2/4 ページ)

» 2010年01月30日 17時19分 公開
[杉山淳一,Business Media 誠]

湘南モノレールはスリリングな生活路線!?

 大観音様の広場から大船駅への眺望は鉄道好きにオススメだ。東海道線の旅客列車、貨物列車、横須賀線、根岸線も見える。そして奥には湘南モノレールも通っている。

観音様目線で見た大船駅。線路がいっぱいで楽しい眺め

 この湘南モノレール、とても楽しい。ふだんは横須賀線で鎌倉へ行くという人も、ぜひ一度お試しいただきたい。大船からは江ノ島へ直行できるルートでもある。JRの「鎌倉・江ノ島フリーきっぷ」では、江ノ電と湘南モノレールが乗り降り自由区間に含まれている。

湘南モノレールで江ノ島へ(左)。車内はクロスシート。景色を眺めやすい(右)

道路から見上げると、かなりの迫力

 湘南モノレールは、戦後の好況期に各地で湧き上がっていたモノレールブームを受けて、三菱重工が懸垂式モノレール事業を推進するために作ったものだという。いわば、大企業が計画した実験線。沿線には三菱グループの社宅も作られ、線路設備だけの実験ではなく、生活に密着した交通機関としての特性もアピールしている。現在も大株主は三菱重工で、駅構内にも三菱グループの広告を見かける。沿線には三菱プレシジョンという会社の工場があって、交通分野や航空宇宙関係の事業を担っているようだ。

 大船から江ノ島まで、6.6kmのルート設定は絶妙だ。丘陵地帯、片側1車線の生活道路の真上に作られており、バスとマイカーが渋滞する様子を下に見て、スイスイと走り抜けていく。単線ながら列車交換設備も多く、日中は7分30秒間隔で運行する便利な路線だ。古くから栄えた商店街の頭上をモノレールが走る。その姿は近未来的で面白いけれど、惜しむらくはバリアフリー設備がないこと。狭いところに駅や階段を工夫して作ったから仕方ない。もっとも、なんとか設備を作ろうという話はあるらしい。

 大船を出ると、右手に大観音様を見ながら左へカーブ。市街を見渡したのち、丘を越えたところが3つ目の駅、湘南深沢だ。ここにはモノレールの車庫があるので、降りて見物してみた。いかつい保線車両を見られたので満足。駅に戻り、さらに大船方面に歩くと広大な空き地がある。ここはJRの大船工場の敷地だったけれど、縮小された部分を鎌倉市が購入した。再開発が行われるようで、付近にはJR新駅の計画もあるらしい。

懸垂式モノレールの車庫。左端が保線車両

 鎌倉市が購入したJR用地には、市の指定有形文化財「泣塔」がある。戦国時代の戦死者を弔うために、地元の人々が建てたものだという。モノレールの線路の下には洲崎古戦場跡の碑も立っている。歴史の資料をひもとけば、ここは新田義貞が鎌倉を攻め落としたルートなのだ。意外なところで歴史散歩も楽しめてしまった。湘南モノレール、侮りがたし。

古戦場跡の石碑。文字は薄くなっている

 さて、湘南モノレール自体の楽しさは湘南深沢の先にある。ここから電車はスピードを上げ、かなり急なアップダウンをする。懸垂式だから、カーブでは振り子のように外に投げ出される感覚もある。何しろ足元には何もない。車両の中央部の席に座っていれば怖くないけれど、運転席の後ろから前を見つめるとかなりドキドキする。懸垂式モノレールがトンネルに入るという珍しい場面もあり、このトンネルの断面も小さめで、肩をすぼめたくなるほど。ただし、運転席の後ろから眺めたいなら夕方以降は避けよう。客室との仕切窓に光反射対策の暗幕が下りてしまう。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.