“フリー”の中から生まれる、新たな出版革命とは上杉隆×小林弘人「ここまでしゃべっていいですか」(6)(3/4 ページ)

» 2010年01月27日 08時00分 公開
[土肥義則,Business Media 誠]

匿名でもいいから同一の名前を使い続けること

フリージャーナリストの上杉隆氏

上杉 日本の国民性なのか社会性なのか、よく分かりませんが、Facebookの加入者がとても少なかったですよね。

小林 そうですね。ただし、日本のmixiに比べてFacebookは同じSNSでも、まったく違う思想でつくられているので仕方ないでしょうね。Facebookはライフログといって、自分のネット上の活動記録や参加サービスへの導線を一カ所に集約して共有するもの。また、mixiが自分の部屋だとしたら、Facebookは誰でも入れるようにしたオープンハウスです。そこが成功の秘けつだったので、いま日本のSNSもオープンハウス型にリフォームしようとしている。

上杉 Facebookを使ったとき多くの利用者は匿名だったので、使い勝手が悪かった。顔が分からないので、同級生も探せない。なので広がりが、生まれなかったのではないでしょうか。名前や顔を出すことに、恐怖感を抱いている人が多いのかもしれませんね。

小林 この問題は昔から議論されていて、顔を出さない人たちの言い分としては「会社があるので、会社の考え方と違うことはなかなか書きにくい」ということがあります。

上杉 でも海外の人たちも会社で働いていますよね。

小林 無論、海外の掲示板でも匿名投稿が目立つので、別に日本だけが特別だと思いません。さらに会社勤めの人の話をすれば、キャリアパスが日本とは違う点も大きいのでしょうね。特に米国の場合、年収アップのために転職することにさほど抵抗感がない。だから、売り物は自分。自分をさらしてナンボのところもある。日本人は自分を個別商品としてではなく、何かに属しているということで売りに出す。

 興味深いと思ったのは、昔、2ちゃんねるで「俺ら『2ちゃんねらー』をナメるなよ」という表現を見かけましたが、「2ちゃんねらー」を「ナントカ株式会社」や「ウンテケ新聞」と置き換えてもよいでしょう。これは米国人のYahoo! 掲示板ユーザーとの差です。責を負いたくないがゆえ絶対安全権に身をおこうとする匿名性とは違う“帰属意識”が微妙に入っている。名無しさんという集団に帰属しているのかな。多くの日本人は匿名を使うことで、リスクを軽減するし、なおかつその共同体に帰属したいのだと思います。

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