予想外に手堅い描写、FED F3.5/50ミリ-コデラ的-Slow-Life-

» 2010年01月25日 08時00分 公開
[小寺信良,Business Media 誠]

 そういえばZORKI-4の構造ばかり書いていて、Lマウントの話をするのを忘れていた。Lマウントとは、初期のLeicaが採用していたスクリューマウント(カメラとレンズの取り付け部分がねじ込み式になっているもの)の規格である。内径が39ミリと小さいのがポイントで、レンズも小型でかわいい。Lマウントは互換レンズがたくさん作られ、日本でもニコンやキヤノンが製造していたが、今となっては高値で手が出せない。

 →旧ソ連製カメラの掘り出しもの、ZORKI-4&FED F3.5/50ミリ

 →常識の斜め上をいくZORKI-4の操作

 旧ソ連のカメラはほとんどがLeicaコピーからスタートしたので、当然それ用のLマウントレンズが豊富にあり、しかも安価だ。ただしFEDは、戦前まで独自フランジバック※のものがあるので、ボディとの組み合わせは要注意である。

※フランジバック……カメラのレンズ取り付け基準面から焦点(フィルム面)までの距離のこと。

 さて、沈動型のFED F3.5/50ミリで久しぶりに撮影してみよう。買った時は絞りのレバーが堅くて動かなかったが、ジッポオイルを垂らしながら力を加えていったら、動くようになった。何とも力業である。

 FEDでいうところの標準レンズだが、Leicaコピーとはいうものの、十分な描写力がある。暗いレンズなので、シャッタースピードを優先するとどうしても開け気味になるが、我慢してちょっと絞ってやると隅々までシャープに写る。

F3.5開放で撮影。暗いレンズだがきちんと手前にピントが合い、後ろはきれいにぼける
F5.6ぐらいまで絞ると、シャープに写る
ディテール感は高い

 ZORKI-4は布製の横走りシャッターだが、1/1000秒まで実装している。ただしそこまでの速度になると、シャッターが行ききった時の衝撃で、視度調整付きのファインダー内の映像が横にカクンとずれる。撮影後の衝撃なので手ブレはないが、シャッターと同時に風景が横にずれるというのは、なかなか斬新な感覚である。

若干淡泊なJUPITERのF4/135ミリの描写

 後日購入したJUPITERのF4/135ミリでも撮ってみた。ZORKI-4のレンジファインダーは50ミリレンズに合わせてあるので、当然それ以外のレンズでは画角が分からない。よってレンズのミリ数に合った別のビューファインダーが必要になる。レンズと一緒に購入したのが、キヤノンの135ミリファインダーである。

キヤノン製の135ミリファインダー

 ただ輸出用なのか、距離数がフィートになっており、ちょっと使いづらいのが難点だ。「ビューファインダーに距離計なんかあってどうするのだ」と思われるかもしれないが、距離に合わせてファインダーの上下角が変わる。つまり、ファインダーの位置とレンズの光軸のズレを合わせないと、正しい構図が分からないのである。面倒ではあるが、レンジファインダーの面白いところでもある。

 撮影方法は、まずレンジファインダーの方でだいたいの構図を決めて、被写体までの距離を合わせる。その後、専用ビューファインダーで正確な構図を決めて、シャッターを押す、という段取りになる。時々忘れて、レンジファインダーで見た構図のままでシャッターを押すこともあるが、まあそれはそれで仕方がない。

 JUPITERのF4/135ミリは、レンズが3枚しかないトリプレットタイプで、収差(ボケやゆがみ)の少ない端正な写りをする。ただ発色が若干淡泊に写るクセがあるので、カラー写真にはあまり向かないのかもしれない。

JUPITERのF4/135ミリ、開放で撮影。解像感は高いが、発色は淡泊
同 F5.6で撮影。なかなかシャープに撮れている

 また最短で2.5メートルまでしか寄れないので、いくら135ミリとは言ってもテレマクロ(ズームを使ってマクロ撮影すること)的な撮り方はできない。 正直買ったはいいが、あまり使いどころのないレンズである。

 Lマウントも、メーカーが違っただけでずいぶん違う描写をするそうである。そのうち旧ソ連製のレンズも一通り試してみたいと思っている。

小寺 信良

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映像系エンジニア/アナリスト。テレビ番組の編集者としてバラエティ、報道、コマーシャルなどを手がけたのち、CGアーティストとして独立。そのユニークな文章と鋭いツッコミが人気を博し、さまざまな媒体で執筆活動を行っている。最新著作はITmedia +D LifeStyleでのコラムをまとめた「メディア進化社会」(洋泉社 amazonで購入)。


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