私が、テレビや新聞に“呼ばれなくなった”ワケ上杉隆×小林弘人「ここまでしゃべっていいですか」(4)(1/4 ページ)

» 2010年01月22日 08時00分 公開
[土肥義則,Business Media 誠]

 ジャーナリスト・上杉隆氏とインフォバーンの小林弘人CEOによる、対談連載4回目。首相官邸や官庁などに置かれている「記者クラブ」は、どこに問題点があるのだろうか。10年以上この問題を訴え続けている上杉氏とメディア業界に携わってきた小林氏が、記者クラブについて徹底的に語り合った。

小林弘人(こばやし・ひろと)

1994年、インターネット文化を伝える雑誌『WIRED』日本版を創刊。1998年、株式会社インフォバーンを設立し、月刊『サイゾー』を創刊した。2006年には全米で著名なブログメディア『ギズモード』の日本版を立ち上げた。

現在、インフォバーンCEO。メディアプロデュースに携わる一方、大学や新聞社などに招かれ、講演やメディアへの寄稿をこなす。著書に『新世紀メディア論 新聞・雑誌が死ぬ前に』(バジリコ)のほか、『フリー 〈無料〉からお金を生みだす新戦略』(日本放送出版協会)の監修を務めている。


メディアというのは奇妙な業界

インフォバーンの小林弘人CEO

上杉 雑誌『サイゾー』は突っ込んだ内容が多かったので、かなりの圧力があったはずです。またグラビア写真などを掲載したりして、小林さんはこれまでにない雑誌作りをしてそういう意味でも苦労されたのではないでしょうか。

小林 そうですね。『サイゾー』のコンセプトは「明るいディスクロージャー」。当時、『噂の眞相』が有名でしたが、活字だけだとどうしても暗い感じがして、アングラなニオイになりがち。なので戦略的に表紙に女性アイドルを掲載していました。

 また『サイゾー』がよく売れたのは、テレビ局や出版社が近くにある書店。「ここまでよく書いてくれた!」「僕は会社員なので、こんなことは書けないけど……」といったメディア関係者が初期に支えてくれていました。そういう意味では業界インサイダー情報が、編集部にもたくさん来ましたね。メディアが自分のメディアで報じられないことが多いといった時点で、いかに奇妙な業界か、ということの証左ですよ。

上杉 『ジャーナリズム崩壊』の本を刊行したとき、新聞とテレビは書評を含めて一切取り上げませんでした。ところが新聞社やテレビ局の中にある書店ではよく売れていた。

 そこで、献本した複数のメディア関係者に「『ジャーナリズム崩壊』は読んでくれましたか?」と聞いたところ「あ……あの本ね。まだ読んでいない」――と、全員が見事に同じ回答だった(笑)。これまで何冊かの本を出してきて、関係者からの反論や抗議はたくさんありました。しかし『ジャーナリズム崩壊』だけは一切なし。唯一、感想のようなものがあったのは昔から知っているNHKの先輩で、次のように言っていました。「あの本は良かったよ。だけど、オレがコメントしたことは書くなよ」と(笑)。

 実は主要メディアの人は“自己愛”が強いのかもしれない。自分がどのように見られているのか、というのをとても気にしている。また自分たちは変わらなくちゃいけない、ということも分かっている。だから自分たちを批判する本をこっそり読んでいる。それは、昔の中学生がエロ本を買う時の心理に似ているのではないでしょうか。明るいディスクロージャーではないですね。

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