“新ニッポン人”に告ぐ――「仕事だけ」ではダメな理由相場英雄の時事日想(1/2 ページ)

» 2010年01月21日 08時00分 公開
[相場英雄,Business Media 誠]

相場英雄(あいば・ひでお)氏のプロフィール

1967年新潟県生まれ。1989年時事通信社入社、経済速報メディアの編集に携わったあと、1995年から日銀金融記者クラブで外為、金利、デリバティブ問題などを担当。その後兜記者クラブで外資系金融機関、株式市況を担当。2005年、『デフォルト(債務不履行)』(角川文庫)で第2回ダイヤモンド経済小説大賞を受賞、作家デビュー。2006年末に同社退社、執筆活動に。著書に『株価操縦』(ダイヤモンド社)、『ファンクション7』(講談社)、『偽装通貨』(東京書籍)、『みちのく麺食い記者・宮沢賢一郎 奥会津三泣き 因習の殺意』(小学館文庫)、『みちのく麺食い記者・宮沢賢一郎 佐渡・酒田殺人航路』(双葉社)、『完黙 みちのく麺食い記者・宮沢賢一郎 奥津軽編』(小学館文庫)、漫画原作『フラグマン』(小学館ビッグコミックオリジナル増刊)連載。


 「アイバさん、そんなスケジュールの中でもスキーに行くの?」――。

 過日、某出版社の文芸担当編集者と打ち合わせをしたときのこと。筆者の執筆スケジュールと家族サービスの過密日程を聞いた担当者が目を丸くする場面があった。この担当者は30代前半の若手で、非常に優秀な人物。だが、お金やレジャーに対する価値観が筆者とは全く違うことに驚愕されたのだ。筆者はバブル景気真っ盛りの1980年代後半に社会人になった“新人類”組。片や担当編集氏は就職氷河期を経た世代。今回の時事日想は、筆者が最近感じた世代間のギャップに触れてみたい。

新ニッポン人

 一昨年、テレビ東京で放映された『久米宏の経済スペシャル“新ニッポン人”現わる!』が話題を集めた。番組では20代から30代前半にかけての若手世代の行動を分析。「クルマを買わない」「高級料理店で食べない」「極端に貯金する」「海外旅行に興味がない」「ビールよりサワー」などの特徴を導き出し、“新ニッポン人”として定義した。

 Business Media誠の編集部からは、当コラムの主要読者層がこの新ニッポン人とちょうど重なると聞いていたので、今回はあえてこのテーマに触れる。

 冒頭の文芸担当編集氏のほか、筆者の周囲には同番組が定義した新ニッポン人世代が少なくない。30代前半で芸能プロダクションに勤務する従姉妹、20代後半で建築事務所に勤務する姪とは頻繁に会う機会がある。彼らは、筆者が都内の盛り場に出没しては気炎を上げたり、クルマのカタログを見てニヤニヤしていると、不思議そうに首を傾げるのだ。

 従姉妹の言葉を借りれば、「物心ついたときにはバブル景気が弾け、就活のときは氷河期の真っ最中。モノを買ったり、レジャーに出かけようという気持ちにはならなかった」という。姪にしても、盛り場で遊ぶ機会はほとんどなく、自宅近くにあるチェーン店の居酒屋に出向く程度だと語る。

『久米宏の経済スペシャル“新ニッポン人”現わる!』(出典:テレビ東京)

 堅実な読者の皆さんからあきれられそうだが、筆者はサラリーマン記者の時代から良く遊んだクチだ。スキーやクルマはもとより、釣りや旅行も大好きで、遊ぶために働いていたといっても過言でない時期を過ごした。

 現役記者当時、月間の残業時間は優に100〜200時間に達していたが、取材に伴う酒席のほか、友人連が主宰する仕事に関係ない飲み会にも時間が許す限り顔を出してきた。最近こそ稼業が多忙で盛り場に出没する回数が激減しているが、各社担当編集者の目を盗んでは居酒屋やバーに足を向けるようにしている。

 筆者がなにを言いたいかと言えば、「カネは天下の回りもの」だということを強調したいのだ。無類の酒好きという要素を差し引いても、酒席で出会った人物が重要なネタ元になったことは数知れず。また、頑固職人たちの料理、あるいはカリスマバーテンダーの技に接し、プロの仕事に対するプライドを知る機会を得た。

 少ない稼ぎからカネを捻出し、酒席や遊びを通じて人に会う。出会った友人たちから得た知識や人脈が現在のモノカキ稼業に生きているのだ。筆者にとってはかけがえのない財産とも言える。別にモノカキ稼業だけでなく、一般企業にお勤めの読者も、新たな取引先の獲得につながったり、恋人を見つけたりする方法として十分に応用が可能だと思うのだが。

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