小林 僕が『サイゾー』を創刊したとき、読者から「物事をナナメに見すぎている」といった賛美と批判がありました。特に宗教、芸能界、IT利権などの記事に対し、実情を書いても“ナナメ”な見方と言われるのは新鮮というか、驚いた次第です。
上杉 物事を真っ直ぐに見ているだけなのに(笑)。
小林 確かに書き方はおちょくっている部分もあったので、そういう批判があっても仕方がないと思います。しかし「ナナメに見すぎている」といった意見に対して、「少しウブなのでは?」とも感じましたね。
上杉 私は記者クラブ問題について、“1億総洗脳化”と表現しています。つまり国民は主要メディアによって洗脳されてしまっている。しかし洗脳している側のメディアも、自分たちが洗脳し、また洗脳されていることを分かっていない。
この4〜5年、インターネット上で「斜め上杉」といった書き方をされています。「上杉はナナメの角度で見ている。反日だ」という意味で、このように書かれているようです。
しかし日本の社会だと私はナナメなのですが、海外からすると少し状況が違ってきます。実は日本の記者クラブに属している記者の多くは、現地でも小さな記者クラブを作り、海外メディアとの交流を持とうとしません。おそらく日本人同士で群がっていると、居心地がいいんでしょうね。
ところが米国や欧州、アジアや南米など世界中の記者たちは、こうした日本人記者の行動を見て「彼らは一体、何をやっているんだ!?」といった印象を持つようです。つまり海外メディアから見ると、日本人記者の方が「ナナメ」なのです。
小林 その通りだと思います。日本の取次制度や記者クラブについて説明するだけで質問の嵐ですから。不条理なことが多いので、合理主義者には説明が難しい。
上杉 しかし日本人記者は日本にいる限り、そのナナメを真っ直ぐとして見ているので、自分たちの問題点が見えてこない。彼らからすると記者クラブシステムの方が正しく、世界の標準システムに問題があるように思えてしまう。つまり立ち居地がナナメだと、真っ直ぐの問題もナナメに見えてしまう。
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