「記者クラブを開放せよ」と言ってきたが……何が変わったのか?上杉隆×小林弘人「ここまでしゃべっていいですか」(3)(1/4 ページ)

» 2010年01月20日 08時00分 公開
[土肥義則,Business Media 誠]

 ジャーナリスト・上杉隆氏とインフォバーンの小林弘人CEOによる、対談連載3回目。2人は10年以上も前から、あるテーマについて訴え続けてきた。「メディアを存続させることは難しいぞ」という小林氏。「記者クラブを開放せよ」という上杉氏。2人が語り続けることで、周囲の人間はどのような反応を見せてきたのだろうか。

小林弘人(こばやし・ひろと)

1994年、インターネット文化を伝える雑誌『WIRED』日本版を創刊。1998年、株式会社インフォバーンを設立し、月刊『サイゾー』を創刊した。2006年には全米で著名なブログメディア『ギズモード』の日本版を立ち上げた。

現在、インフォバーンCEO。メディアプロデュースに携わる一方、大学や新聞社などに招かれ、講演やメディアへの寄稿をこなす。著書に『新世紀メディア論 新聞・雑誌が死ぬ前に』(バジリコ)のほか、『フリー 〈無料〉からお金を生みだす新戦略』(日本放送出版協会)の監修を務めている。


立ち居地がナナメだと、真っ直ぐの問題もナナメに見える

インフォバーンの小林弘人CEO

小林 僕は10年以上も前から同じことを言っています。「メディアを存続させることは難しいぞ」と(笑)。紙メディアで働いている人は頭が固いのではなくて、Webの発想を持ち合わせていない人が多いだけ。僕がシンポジウムなどの席で「10年前と言っていることは変わっていませんが……」と話すと、ウケてしまうあたり、オーディエンスは自嘲気味なのかもしれない。あきらめているのかな?(笑)

上杉 私も10年以上も前から同じことを言っています。「記者クラブを開放せよ」と(笑)。主要メディアで働く人たちの頭はそれほど固くなく、個々の記者たちは私の話に「そうだな」と納得してくれる。しかし彼らは次にやってくる新しいメディアシステムを想定できないから、自らの問題としてとらえることができない。要するに違う世界のことが分からず、思考停止しているだけ。

 日本人記者からすれば、記者クラブ問題の先にあるシステムはSFの世界と同様のことなのかもしれない。だから私が同じことを言い続けても、彼らは意味を理解できていない。

 メディアが記者クラブ問題に関して、一切伝えてこなかったというのは致命的です。それは準備運動すらしていないことになりますから。例えば北朝鮮や部落解放同盟などタブーと言われている問題ですら、彼らは報道する準備ができていました。しかしこの記者クラブ問題に関してだけは違う。なぜなら多くの記者がこの問題を認識していないがゆえに、その問題は存在しないことになっているからです。

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