「必要なのは才能発掘の次のステップ」――日本のアニメ業界に足りないものコミックマーケットシンポジウム(1/4 ページ)

» 2010年01月18日 08時00分 公開
[堀内彰宏,Business Media 誠]

 YouTubeやニコニコ動画などの動画配信・共有サイトが普及するにつれて、公開した動画をきっかけに注目を集めるアニメーション作家もしばしば登場するようになった。しかし、華々しく登場しても、優れた才能を持つ人たちがそこから成長して、よりよい作品を生み出していくためのシステムが、日本ではまだそれほど整っていない。

 12月30日、世界最大規模の同人誌即売会コミックマーケット(コミケ)で行われたシンポジウムでは、NHK時代に「デジタルスタジアム」のチーフプロデューサーとして、新しい才能の発掘に尽力した東京藝術大学大学院の岡本美津子教授が、日本のアニメーション作家のキャリアパスについて語った。

東京藝術大学大学院映像研究科アニメーション専攻の岡本美津子教授

広がる才能発見の場

岡本 本日は「日本発コンテンツの創出」というテーマでお話をするようにということでしたが、“日本発コンテンツ”ということで私がいつも思い出すのは、世界最大と言われるアヌシー国際アニメーション映画祭(フランス)での出来事です。

 日本のアニメーションが上映される際、「ジャパン」とアナウンスされると、会場がシーンとなるんですね。「なぜシーンとなるか」というと、「よし、これからいいものを見るぞ」みたいな感じで、世界の人たちが日本のコンテンツに期待しているからです。そのように日本のコンテンツがリスペクトされている現状を目の当たりにしてきたわけなのですが、今日はそう楽観的な気持ちではいられないぞというようなニュアンスのお話をしたいと思います。

アヌシー国際アニメーション映画祭公式Webサイト

 近年、日本の中でのアニメーションの制作本数は減ってきています。また、アニメーション監督には高名な方々が多いですが、一方で高齢化が進んでいます。「こうした状況下で日本発コンテンツをどのように創出していけばいいのか」ということが私の大きな問題意識になっています。日本のアニメーション映画に限ると、今や100%“Made in Japan”ということはありえません。ほとんどの作品は、日本と海外がコラボレートして作っています。そういった時代になっている中、「“日本発コンテンツ”というのはいったい何なんだ」と思うことがあります。

 私はNHKで「デジタルスタジアム」という番組を担当していました。CGやアニメーション、実写などのデジタル・アートを一般公募し、紹介する番組で、2000年3月にスタートして現在10年目を迎えており、これまで4000点を超える作品の応募がありました。日本のテレビ視聴率が世界的に見ても高いということで設けた番組なのですが、ここで見初められた才能が今、広告業界やゲーム業界で活躍しており、才能発見の場となっている感じがします。

 テレビだけではなく、コミケのようなイベントやフェスティバルも才能発見の場として成り立っています。一番代表的なのは「文化庁メディア芸術祭」で、応募者数や受賞作品展への入場者数も年ごとに増えており、世界でもトップクラスのメディア芸術祭となっていると言えます。

文化庁メディア芸術祭(画像は岡本氏提供)
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