「文系・大卒・30歳以上」がクビにならないために……会社で生き残る方法吉田典史の時事日想(2/3 ページ)

» 2010年01月15日 08時00分 公開
[吉田典史,Business Media 誠]

 そのためには「上司に『かわいいやつだ』と思われることが重要」と深田氏は言い切る。これは建前抜きで、まさしく正論である。時事日想で何度か述べてきたが、会社が社員(この場合はとくに正社員)を辞めさせるとき、安易な解雇はまずしない(関連記事)。あるとすれば、本人がやる気をなくすような仕事をさせること。そして辞表を書くように仕向けることである。

 会社員経験の浅い人は、このようにして辞めていく社員を「能力が低い」とか「実績を出すことができなかった」と言うが、それは違うと思う。そもそもそこまで言い切れる根拠があるのだろうか。会社はその社員の成績を下げようと思えば、あてがう仕事でどうにでもできる(関連記事)。このカラクリを心得ているならば、部下はおいしい仕事を獲得することが大切になる。それを踏まえると、上司からそのような仕事を与えられるように何らかの工夫をしていく必要がある。この姿勢もまた、上司からすると、前述の「行動評価(取り組み姿勢や学びなど)」で高い得点を得る1つと言える。

会社の中で、巧妙に立ち回っている人たち

 さらに深田氏は言う。

 「おいしい仕事で実績をあげれば、あえて自分からアピールなどしなくとも、職場の中で十分に目立ちます。そこでうぬぼれることなく『上司がチャンスを与えてくれた』『上司がサポートしてくれた』などと、持ち上げるようにするべきでしょう。

 しかし、おいしい仕事を与えてもらっても実績があがらないこともあります。この場合は、早いタイミングで上司に相談するべきです。その責任を上司にも担ってもらうことが必要なのです。そして次は、もっとおいしい仕事を回してもらうようにするといいでしょう」

 これもまた、意味が深い。かつて大手メーカーの人事部に勤務し、いまはコンサルタントして多くの企業の現場を見ているだけに、説得力がある。私が20〜30代の会社員を取材していて好ましくないと感じるのは、時おり、上司からあてがわれた仕事を抱え込み、それができないと萎縮し「私はダメなんだ」と自爆していく人がいることだ。悪質な職場は、そのように仕向けていく先輩たちがいることを忘れてはいけない。私は、そうした自虐的な思考の人を見ると、かつての自分を見ているようで胸が苦しくなる。あえて言いたい。「あなたは能力が低いのではない。実績を出すことができないのでもない。担当した仕事に問題があったのだ」と。

 上司にそこまでストレートに言うことはタブーだが、これはけっして詭弁(きべん)ではない。堂々と違う仕事をさせてもらうように交渉することを勧めたい。あなたの同僚を観察してみよう。要領のいい人は、巧妙に立ち回っているのではないだろうか。繰り返しになるが、会社員は担当する仕事でその人の評価が決まるのである。それならば、なおさらもっと敏感になるべきだろう。いや、そうなろう。

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