コラム
» 2010年01月14日 08時00分 UPDATE

相場英雄の時事日想:過剰報道の裏で何が起きているのか (1/2)

全国各地で起こる大地震や水害などの現場に、いち早く駆けつけるテレビや新聞の記者たち。災害現場の状況などを発信するわけだが、彼らの立ち振る舞いに問題はないのだろうか。

[相場英雄,Business Media 誠]

相場英雄(あいば・ひでお)氏のプロフィール

1967年新潟県生まれ。1989年時事通信社入社、経済速報メディアの編集に携わったあと、1995年から日銀金融記者クラブで外為、金利、デリバティブ問題などを担当。その後兜記者クラブで外資系金融機関、株式市況を担当。2005年、『デフォルト(債務不履行)』(角川文庫)で第2回ダイヤモンド経済小説大賞を受賞、作家デビュー。2006年末に同社退社、執筆活動に。著書に『株価操縦』(ダイヤモンド社)、『ファンクション7』(講談社)、『偽装通貨』(東京書籍)、『みちのく麺食い記者・宮沢賢一郎 奥会津三泣き 因習の殺意』(小学館文庫)、『みちのく麺食い記者・宮沢賢一郎 佐渡・酒田殺人航路』(双葉社)、『完黙 みちのく麺食い記者・宮沢賢一郎 奥津軽編』(小学館文庫)、漫画原作『フラグマン』(小学館ビッグコミックオリジナル増刊)連載。


 昨年夏、九州や中国地方を集中豪雨が襲い、甚大な被害をもたらしたことをご記憶の読者も多いはず。世界的な異常気象発生の影響で、日本全土を今年もさまざまな災害が襲うことが予想される。各地で起こる水害や雪害、あるいは大地震などの災害現場では、テレビや新聞などの記者がいち早く駆けつけ、被災者の声を全国、あるいは世界に発信することになる。が、こうした現場で記者の立ち振る舞いに眉根(まゆね)を寄せる人も少なからずいるのだ。災害現場ではどんなことが起こり、メディア関係者はどのようなひんしゅくを買っているのだろうか。

宿泊費高騰の弊害

 「あの社が現場に乗り込む前に、なんとか駆けつけなければ」――。

 数年前、中部地方で発生した災害に際し、知人のテレビ記者がこうつぶやいたことを筆者は鮮明に記憶している。

 「他社よりも早く現場入りするのは当たり前じゃないか」――読者の大半はそう感じたはずだ。が、知人記者が愚痴めいた口調で言ったのには全く別の理由がある。その理由とは、知人が言う“あの社”、同業の某局の存在がある。

 あえて名は伏すが、あの社とは潤沢な取材経費で知られる最大手を指す。災害報道は同局にとって最優先事項であるため、記者をはじめ、カメラマンなどの大量の人員をフル稼働させる。このため、新聞・テレビを通じ、最大の取材クルーが現地に入ることになるのだ。知人のテレビ記者が懸念したのはまさしくこのポイントだ。

 「現地はもとより、周辺地域一帯のビジネスホテルや旅館、民宿が軒並みふさがってしまう」というのだ。

 筆者の古巣の元同僚によれば、宿がふさがってしまうだけならまだましで、「(某局が)コスト度外視で強引に宿を押さえるので、災害地周辺の宿泊施設が一斉に値上がりしてしまう」ことさえあるようだ。

 同様に、世界各地の紛争地でも同じようなことが起こっている。某局とニュース専門の米放送局が現地入りすると、「宿だけでなく、ガイドやタクシー料金が天井知らずとなってしまう。取材経費が乏しい社やフリー組は命の危険にさらされながら野営や白タクの利用を強いられる」(フリーのカメラマン)。

 やや話がそれてしまったが、災害地域に入るのは、報道関係者だけではない。災害復旧に携わる役所の人員、あるいは企業のスタッフも少なくない。

 「災害が発生した際に宿泊施設が取れず、救援に出た社員が車中泊を強いられたケースは少なくない」(通信会社関係者)との声があるのは紛れもない事実だ。

 被災地の情報をいち早く発信し、被害者の安否を詳報するのは報道の使命だ。が、使命に入れ込みすぎるあまり、他業界の救援スタッフにまで迷惑を及ぼすのであれば、報道マンが振りかざす「使命」はあまりにも身勝手だと言ったら言い過ぎだろうか。

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